とげ抜き新巣鴨地蔵縁起

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  • サイズ B6判/ページ数 288p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784062139441
  • NDC分類 911.56
  • Cコード C0093

内容説明

この苦が、あの苦が、すべて抜けていきますように。「群像」連載時より大反響の長篇詩遂に刊行。

目次

伊藤日本に帰り、絶体絶命に陥る事
母に連れられて、岩の坂から巣鴨に向かう事
渡海して、桃を投げつつよもつひら坂を越える事
投げつけた桃は腐り、伊藤は獣心を取り戻す事
人外の瘴気いよいよ強く、白昼地蔵に出遇う事
道行きして、病者ゆやゆよんと湯田温泉に詣でる事
舌切らず、雀は婆を追い遣る事
梅雨明けず、母は断末魔に四苦八苦する事
ポータラカ西を向き、粛々と咲いて萎む事
鵜飼に往来の利益を聴きとる事
耳よ。おぬしは聴くべし。溲瓶のなかの音のさびしさを。の事
秋晴れに浦島の煙立ち昇る事
瘤とり終いに鬼に遇い、雀の信女は群れ集う事
伊藤ふたたび絶体絶命、子ゆえの闇をした走る事
とげ抜きの信女絶望に駆られて夫を襲う事
良い死に方悪い死に方、詩人は死を凝視める事
伊藤病んで、鳥花に変じ、巨木はべつに何にも変わらぬ事

著者等紹介

伊藤比呂美[イトウヒロミ]
詩人、作家。1955年東京生まれ。青山学院大学文学部卒業。1999年『ラニーニャ』で野間文芸新人賞受賞。2006年『河原荒草』(思潮社)で高見順賞受賞。1997年からカリフォルニア在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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どんぐり

17
「母の苦、父の苦、寂寥、不安、もどかしさ。わが身に降りかかる苦。母の老い、父の老い、寂しい、寂しい老後」、伊藤比呂美が語る老父母の介護。ここには、老いた母、父がとても寂しくてそしてふしあわせだ、とそれを思い煩い苦悩する詩人がいる。老いに、老いる自分に、そして世間に向けて放たれた赤裸々な言葉。そして「おう、おう、おう、おう、おう。おう、おう、おう、おう、おう」と叫ぶ怒りの声。――寂しい老後であります。老後は寂しいものであります。2015/09/13

tomo*tin

17
人はみな、心を開いたり閉ざしたりしながら育まれ、愛や苦悩や名称の無い説明不能な感情に振り回されながらも性を営み繁殖し、七転八倒しながらまた育み愛おしみ、病んでみたり闇を見たりしながら知らぬ間に老いてゆき、やはり最後は一つの例外もなく死に至る。たいしたことではない。それだけのことである。けれど簡単なことではない。その輪廻は途切れを知らぬからだ。娘であり母であり妻である伊藤さんの言葉は爆弾でもあり祈りでもあるのだと思う。言霊の威力を知る詩人の言葉は予想以上に物凄かった。2009/04/23

真琴

13
初めて伊藤さんの作品を読んだと思います。言葉の力が凄まじく、活字がワッと飛び込んできて押しつぶされそうな勢い。多分、この本を書かれた時の伊藤さんと同年代だろうと思います。自分の辿ってきた道、これから辿るだろう道を所々重ね合わせながら読みました。石牟礼さんとの話が印象的でした。「声をお借りしました」と言う表現、素敵ですね。★★★★☆2022/08/21

かもめ

12
グルメエッセイが面白く、著者の人となりを知りたく手にしたが・・・う~ん、これは何だろう。一見して念仏のお教本のような本書。苦しみ嘆きがぎっしり詰まっている。「若い時の苦労は買ってでも、云々」苦労した人は尊敬するが、本書は共感できず。辛かった頃の呟きか。長い人生において、そんな時もあるでしょう。2020/06/03

くさてる

10
再読。読みながら静かに泣いた。伊藤比呂美の文章は、自然で、生々しくて、こちらの胸をえぐるようで、でも、優しい。自然がそのままの姿であるだけなのに、受け手の人間の心に様々なものを残していくのに似ている。親が老い、パートナーも老い、子どもも歳をとり、自分も年齢を重ねていく。そんな時間の流れのなかで生きている女性としての「わたし」をここまで身近に感じて、泣いていると、比呂美さんが一緒に泣いてくれているような錯覚さえ感じるのだ。わたしもあなたも、生きている、ということは、歳をとることなのだ。2014/11/28

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