出版社内容情報
【内容紹介】
その本はたった一人にだけ、たった一晩だけしか他人に貸してはなりません。
かつて一度でも、むさぼるように本を読む幸せを味わったことのある人に。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
榊原 香織
89
幻の本を巡って、複雑に入れ子状になったお話達。 作者の本に対する想いがいっぱい入ってて、本好きには面白い。 小泉八雲の姿が最初から最後までチラ見する。 松江も出てくるし。 ”麦～”に登場する題名ですが、この本、というわけではない。 連作ミステリ、と言えるだろうか。 ”虹と～”の長野のお城てどこだろう？2021/07/07
藤月はな（灯れ松明の火）
73
コミュ力やアグレッシブさを重要視し、プライベートにも介入して親睦を深めていることを強調する会社が多いことに気づいた就活中に一章での「日本の社会は本を読んでいる人には冷たい」という言葉をふと思い出して再読。第一章のお料理の場面と本好きによる読書談義が好きです。でも腐女子やオタクが堂々と市民権を得た中での水沢さんの言は今も耳に痛い＾＾；特に本好きのための読書談義についてはコミュニケーション・ツールの発達で短い時間とは言え、同じ趣味の人達がオフ会やチャット談義を行えるようになったのは大きな転換点だと思います。2014/05/08
naginoha
52
この全体に靄がかかった感じはまさに恩田陸さん。 ホラーなの?ミステリーなの?いや、そもそもそんなジャンル分けなど意味をなさない。現実と虚構、外側と内側、様々な方向に繋がりの糸が有機的に張り巡らされているが、その一本一本にミステリの伏線のような明確な存在理由は存在しないと思われる。考えてみれば、現実には存在理由をはっきり持った事柄なんてほんの少し。しかし、それを改めて文字にされるとやっぱり心の中に不安がまとわりついてしまう。答えの出るあてのない底なし沼のような世界に入るかどうか。選ぶのは読者自身。 4/52020/09/28
藤月はな（灯れ松明の火）
41
何度、読んでも大好きな重奏曲のような味わい深い作品です。第一章では年を重ねた読書人たちの現代の読書に対するシビアな意見と一生に読める本の量、現代での読書人の肩身の狭さに思い当たる節があって「アイタタタ！！」と思いましたorz「私も目の間にびっしりと詰まっているように見えるのだろうか？」とちょっと不安です。第二章では寝台列車での酒盛りシーンに憧れます（笑）第三章では青春につく残酷さと哀切で不思議な余韻を、第四章では恩田さんらしき（？）作家さんのことが「麦の海に沈む果実」の別の展開があり、何とも言えぬ味わいで2010/09/24
りーぶる
34
不思議な読後感でした。きっと私はこの作品の何も分かってはいないのです、が、どの章も分からないのに面白くて、怖くて、ぞくぞくして、あっという間に読了していました。恩田陸さんは初読みですが、もしかしたらハマるのかもしれない…グロテスクで非情な描写もあったけど、嫌にもならず先へ先へと読み進められました。この前のシリーズになるのかな？麦の海に沈む果実、も読んでみたいです。2014/08/03
