内容説明
「戦後」とは何か?いま生きられる場所の深部で「われわれの戦後」と出会い真にラディカルな思考の回路を拓く力作評論集。
目次
敗戦後論
戦後後論
語り口の問題
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミツ
18
“もう死者をして死者を葬らせるべき時だと思うのさ”日本の戦後を覆うある「ねじれ」について、大胆な論考を行った名著。美濃部達吉や大岡昇平を扱った政治篇の「敗戦後論」、太宰治とサリンジャーを扱う文学篇の「戦後後論」、最後にアーレントを題材に政治と文学両者の接合としての「語り口の問題」の三篇が、それぞれ前の論を補強するような形で展開される。発表後数々の批判や論争を呼んだだけあり、改憲と護憲、死者への弔いと戦争責任、自己と他者、共同性と公共性について、独特の、ねじれた語り口で語られる。また折に触れて読み返したい。2016/09/22
v&b
1
海外含み、相当に誤解されているであろう本。「われわれは戦争に負けた。その負けいくさの国に、負けた現状のまま憲法が必要だとしたら、第一条はこうなる。負けた人間が、負けたという事実を自分に隠蔽したらしまいだ。美濃部[達吉]はきわめて簡潔な態度を、ここに示しているというべきなのである。」 2019/8/28読了2019/11/01
内間悠介
1
戦前と戦後を比べて、思想はどう変わったのか、文学作品等から語っていく評論。かなり難解でしたが、得るものは多かったです。戦没者に対する扱いや、諸外国からの扱われ方等、広く・深く(深すぎる部分も)探っておられました。先に戦艦大和の最後を読んでいたので、図らずも予習になっていました。2014/10/06
勝浩1958
1
「一言でいえば、日本の三百万の死者を悼むことを先に置いて、その哀悼をつうじてアジアの二千万の死者の哀悼、死者への謝罪にいたる道は可能か、ということだ。」についての可能性を探る論考であり、かなり難解で私には分からないところが多かったが、今でも時々アジアの諸国から戦後補償の話が出てくるたびに、政府やマスコミの答弁はあやふやな感じがするのは、この著作が示すところにその原因があるのだろうか。2011/11/07
hiratax
0
太宰治が戦意高揚作家への批判としてあべこべではないかという 意で「冬の花火」を描く。この頃、高校の友人に久方ぶりに会うため 幕張へ行き、街を歩いてセイタカアワダチソウを撮った。 間、ずっとこの本のことが浮かんでいた。2005/11/07