出版社内容情報
【内容紹介】
人間の根源悪とは何か。
軽井沢の森と抒情の霧にくるんで、物語の鬼才・宮本輝が、人間内奥の悪と善、卑と浄をえぐりだした傑作長篇。
毎年夏になると布施金次郎・美貴子夫妻は、娘の恭子、志津をつれて軽井沢の山荘にやってくる。少年久保修平の両親はここの別荘番として雇われている。彼の2歳上の姉美保と母は美しく、父は足が悪い。修平17歳の夏、門柱が倒れて布施美貴子が死亡する。警察は事故として処理したが、物語の発展に従い、意想外の生生しい濃密な人間関係が露われて……。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
美雀(みすず)
35
読んでる時はあまりにも内容の濃さに頭がついていけないですが、本を閉じると情景が甦る不思議な作品です。殺人事件やドロドロの人間関係、近親相姦など重いストーリーですが、読後の奇妙な余韻。再ドラマ化するとしたら、若手の実力派の俳優さんにチャレンジしていただきたい。2014/01/20
柊子
17
35年ぶりの再読。30代で読んだ時は、やたら嫌悪感を覚えたが、今回は哀れさが募る。時効を迎えた後、その先の人生を、彼はどう生きるのか? きっと幸せとは程遠い日々だろう。異国で暮らす姉は、悪いことに手を染めているのではないか? そんな気がしてならない。死んだ者も、生き残った者も、みんな哀れだ。2021/10/22
Nobuko
17
軽井沢に別荘を持つ富豪・布施金次郎とその別荘番・久保一家の愛憎の物語.お金のために好きでもない相手と結婚した布施.美しい久保家の母親と親密になり,その上娘にまで・・・.それを知った布施夫人,娘達,久保家の父親,息子,それぞれが想像を膨らまし疑心暗鬼に喘ぎ,お金だけを寄る辺に悪事と隠蔽を重ねていく.とても重たく,男女の機微なぞこれっぽっちも興味の無い私には理解不能な作品でした.結局ペルシャ猫はどうなったのだろう?冒頭の鍋野医師は?疑問が多く残りました.2016/03/20
シトラス
2
ペルシャ猫を抱いた男のことがもう少し詳しく知りたかったけど、それも含めてなんとなく陰鬱な様子の人たちの物語で、あまりすっきりする話ではなかった。2013/07/29
you123
2
彼の作品で以前読んだ『人間の幸福』は少し硬い内容であったが、これは良かった。 人間の心の中、男と女のドロドロした汚いやり取りなどが見事に露骨に表現されている。 (ストーリー)布施家の別荘番の息子が入院先の先生に過去の恐ろしい話を告白するところから物語りは始まる。 ・・・別荘の主人と母、姉までもが関係を・・・。2012/12/01