講談社文芸文庫
戦後短篇小説再発見〈2〉性の根源へ

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  • サイズ 文庫判/ページ数 285p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784061982628
  • NDC分類 913.68
  • Cコード C0193

内容説明

人間の内奥に潜む性の魔力―戦時下の性から現代の突端の光景まで、エロスとしての人間に肉迫する11篇。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

メタボン

35
☆☆☆☆ 衝撃的な作品が多い。客に見知らぬ父の姿を重ね壮絶なまでに落ちていく娼婦「マッチ売りの少女・野坂昭如」、熟れ切った果物と女の肢体にエロスを感じる「蜜の味・田久保英夫」、執拗で暴力的な快楽を求める女の凄味「赫髪・中上健次」、老婆の範疇に入ろうとする女が聾唖の男から求められる情愛のない性交がおぞましい「遠い空・富岡多恵子」、子を産めぬ身体の妻と夫の心情が重なることはない「明くる日・河野多恵子」、夫に売られる妻が意外にも逞しい「鳩の街草話・田村泰次郎」、従軍慰安婦を題材にした「セミの追憶・古山高麗雄」。2020/04/15

あ げ こ

17
富岡多恵子「遠い空」が最も印象深い。永遠につきまとう、性を求める取り立ての、恐ろしさ。その女性にとって、老いは最早、目を背けたくなるほどの、純粋な切実さを以って、痛烈に迫り来る性の、性を拒むための、隠れ蓑とはならない。生きている限り、性もまた、消え失せることなく、自らの身体に、宿り続けるのだから。抗いを、嫌悪を、不快感を、示しながら、逃れられぬ、惨さ。性愛の曖昧さ、性愛を彩る飾り一つ持たぬ、率直で、愚かしく、従うほかのない、凄みを帯びた、求め。密かな陰翳を抉られるような、恐ろしさと、暗い快さが、残る。2014/12/11

モリータ

13
野坂昭如の「マッチ売りの少女」は、小学生ぐらいのとき米倉斉加年の挿絵つき絵本で読んだと思っていたが、絵本にしては分量が多かったので、抄録だったのか。それ以外では田久保英夫の「密の味」が良かった。2014/07/29

踊る猫

12
あくまで好みの問題として言えば、個人的に鮮烈に印象に残ったのが野坂昭如「マッチ売りの少女」と中上健次「赫髪」、村上龍「OFF」と富岡多恵子「遠い空」だった。野坂・中上・村上氏はまあ読む前から自分の気に入りそうな作品を書いているのだろうなと思ったのだけれど、ミステリ的な面白さを漂わせる不条理な「遠い空」と遭遇出来たのは僥倖だったと思う。吉行淳之介の作品を除いて男女の関係が描かれているのだが、男とは支配する側なのか、それともされる側なのか? 陳腐な問いだが、なかなか無視出来ない問題ではないかと思う。面白かった2016/07/27

真琴

11
★★★☆☆ 性にまつわる短編集。「戦争と一人の女」坂口安吾、「マッチ売りの少女」野坂昭如、「遠い空」高岡多恵子が印象的でした。「遠い空」は読んでいてゾクゾクしてきた。言葉というコミュニケーション手段が無く、社会性もないように思われ、本能のままの欲望は動物を想像させられた。ホラーのような作風。毎朝少しずつ読んだのですが、朝に読むような内容ではなかった・・・。2023/05/10

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