出版社内容情報
【内容紹介】
「桜島」「日の果て」などの戦争小説の秀作をのこした梅崎春生のもう1つの作品系列、市井の日常を扱った作品群の中から、「蜆」「庭の眺め」「黄色い日日」「Sの背中」「ボロ家の春秋」「記憶」「凡人凡語」の計7篇を収録。諷刺、戯画、ユーモアをまじえた筆致で日常の根本をゆさぶる独特の作品世界。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
175
第32回(1954年)直木賞。 何気ない日常生活を描いた短編集である。 表題作は ボロ家を巡る俗物たちの日々を 思う存分に描いたもので 昭和の雰囲気 満載の作品である。どの短編にも 俗物は登場し 酒を呑み 絡み合う …時代の不安定さを、死の儚さを さりげなく描いた作品集だった。2018/10/15
shizuka
67
至極面白いというレビューを読み、矢も楯もたまらずさっそく探してみたところ、青空文庫にて発見。ラッキー。すぐに読む。ヤバさに夢中になる。本書、どうしようもない男たちばっか出てきて、騙し騙され。結句「騙されるもんか」と意地の張り合いをする。その意地も建設的であり生産性があるならまだしも、なんもない。煩いこれぞ男の矜持なのだ!ともいえない。実にくだらない。そのくだらなさが本当に面白い!レビュー通り。野呂氏と主人公の攻防戦まだまだ続くようだけれど、どうなったんだろう。梅崎氏の退廃加減気に入った。他作品も読まねば。2017/04/19
おにぎりの具が鮑でゴメンナサイ
47
マチダコーがまだカタツムリだった頃の愛読書だというので読んでみた。表題作がおもろい。だまされて住むことになったボロ家で巻き起こるさらなるトラブル。時代のせいか性格ゆえか、理不尽のすべてにぼよよーんと身を任せ、とはいえ器の小ささが発想させる嘆きとセコさが落語のようでなんともたまらん。私もボロ家に住んでいて、上階人の深夜運動会に悩まされたり、あえぎ声に耳を澄まして羨ましがったり、隣の部屋でおっさんがある日孤独死してたりする。引越そうとしたがこの春には間に合わなかった。秋には間に合わせたい。秋は幸せなはずだ。2017/04/16
ステビア
19
「幻化」のような倦怠感溢れるのもあったけど、ユーモラスな小説がほとんど。面白かったし、うまかった。2014/08/29
tomi
19
第32回(昭和29年下半期)直木賞受賞の表題作など7篇。うち4編初読。隣人が勝手に庭の木を切ったり野菜を植えたりと実効支配して行く「庭の眺め」等、どの作品も結構ひどい話なのだが、とぼけたおかしみがあって面白い。中でもやはり表題作は傑作。共に騙されて同居する事になってしまった二人のいがみ合い意地の張り合い、仮にも先生と呼ばれる者同士の大人げない泥仕合が笑えます。2013/07/17