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- > 講談社 吉川英治文庫
内容説明
当初、二百回ぐらいの約束で新聞連載が開始されたが、作者の意気込み、読者・新聞社の熱望で、五年がかり、千余回の大作に発展した。一度スタートした構成を途中から変えることは至難だが、さすがは新聞小説の名手。ただし、構成は幾変転しようと、巌流島の対決で終局を飾ることは、不動の構想であった。作者が結びの筆をおいたとき、十二貫の痩身は、十貫台に―文字通り、鏤骨の名作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
k5
72
ついに読了。うーん、実に面白かった。まとめに入って緩んできたかな、と少し思ったのですが、巌流島決戦の前後からの緊張感がすごい。昔、蓮實重彦と村上龍の対談で、「マッチョは描写しないので巌流島の闘いが一行で終わる」と言っていた記憶があるのですが、二人とも実は読んでなかったのかな。しかし、最後まで読んでもメインヒロインはお通ではなくお杉ばあさんだと思いました。2021/01/19
優希
72
巌流島の戦いへと物語は導かれていきます。武蔵と小次郎の運命を決める戦いとも思われる巌流島。力と技の剣と精神の剣のぶつかり合いはやはり緊張感を感じました。物語の全ては腕と心というような表裏一体の戦いへと導かれたのではないでしょうか。巌流島の後の武蔵も気になります。2019/01/09
ともくん
68
何回読んでも、武蔵と伊織の再会の場面、武蔵とお通の別れの場面では、必ず涙が流れる。 極上の物語を生んでくれた吉川英治には、本当に感謝したい。 昭和、平成と時代を超え、次の時代にも、永遠に語り継がれる大名作。 2019/02/03
としちゃん
54
シリーズ最終巻。最初は宮本武蔵の成長物語かと思っていたら、本当に深い人生の哲学書でした。いや、本当に深かったです。中でも、煩悩に苦しむ武蔵が愚堂和尚の啓蒙を受けるシーンは圧巻です。天賦の才能に恵まれた驕慢な天才小次郎と、自分の凡質を知っているからこそ、絶えず磨こうとし、人には見えない苦しみと戦う武蔵。この二人の勝負は技や力vs精神なのですね。人の才能を羨んだり、自分の凡庸な才能を嘆いたり、それは努力や苦しみから逃げているだけだと言うことを、深く心に刻んだ結末でした。この本に出会えて良かったです。2017/12/29
jam
46
もう大分以前にこの本を朗読したことがある。たったひとりの人のために。最初はその人のためにだけ読んでいたが、いつからか先が気になり朗読に先んじて読んでしまった。8巻目、最後の文章が剣豪武蔵の人生を凝縮している。諦観たゆたうそれは、武蔵と共に長い旅路の果て、作者が到達した場所であろう。私の朗読は最後まで行くことは無かったが、久しぶりに読み、当時のことを鮮やかに思い出した。昨年から再読していたが、年始にかけ読み終えた。8巻まとめてレビュー。2016/01/01