講談社文芸文庫<br> 夢の島

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講談社文芸文庫
夢の島

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  • サイズ 文庫判/ページ数 221p/高さ 16X11cm
  • 商品コード 9784061960169
  • NDC分類 913.6

内容説明

巨大な都市のゴミの捨て場所―夢の島。バイクを疾駆させ、主人公を惹きつける若い女。ゴミの集積地が、“魅惑の場所”に鮮かに逆転する―時代の最尖端での光芒を放つ、日野文学の最高傑作。芸術選奨受賞作。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

らぱん

37
再読。耐性ができてしまったのか、魔法は一度限りだった。初読時は主人公の意識の変容を共有し閾値を超えていく感覚を味わった。不思議の理由を探るつもりだったが、冒頭の「意識が変わり始めるとき(良く変わることも悪く変わることもある)、それに対応する何らかの出来事が必ず起こるものだ。ほとんどの場合、まずほんの偶然の、取るに足らないような形で。/(それ以外の起こり方がありうるだろうか)」で納得し読了はしたが、謎解きは野暮だと思えてきた。著者にとってもこの作品は異質なものらしいが、他の作品を読んでみたいと思っている。2019/07/11

らぱん

37
面白い体験をしているのだと思う。自分の脳内でアドレナリンとかドーパミンとかが出て興奮しているのがわかる。作品に不思議な熱量がありドライブ感とグルーブ感がある。ピンチョンみたいだ。今、自分がこの読後に受けている感覚は物語の内容とは次元が違うところにあるように思う。頭で考えて理屈にしたら、この感じがどこかへ行ってしまいそうでもったいないので考えない。せっかくのトリップなのだから。醒めたころにもう一度読んでみようと思う。2019/07/03

風に吹かれて

14
1985年刊。焼跡に誕生したいくつもの高層ビル建築に関わってきた主人公が、ふと大都会の廃棄物捨場を訪れる。そこは「夢の島」と名付けられた東京湾の片隅の埋め立て地。意識が変わるから何かが変わるのか。何かが変わることを予感して意識が変わるのか。「夢の島」の蠱惑的な描写は、まるで人々が日常生活で表に出さない世界の、快楽とも苦痛とも言い難いもので、具象的なものも抽象的なものも超えていると感じた。廃棄場から見た高層ビルが林立する都会が「夢の島」に見えてくる。それは、人によっては、正夢とも悪夢ともみえるものだ。2015/11/23

パラ野

13
再読。破滅か救済かと言われたら、きっと救済だと思う。肉体が透明になって、電波と情報だけの人間だらけになる、という作中の言葉がちょっと怖かった。今、日野啓三さんが生きてらっしゃったら、どのように東京を描くのだろうか? 偶然迷い込んだ晴海のコミケでコスプレをした少年少女たちのイメージが作中で次第に変容していく。彼らがマネキンになって、マネキン女が作るマネキンが人になって。戦後の焼け野原から、夢の島と呼ばれていたゴミ捨て場や台場で起こる夢のような生活。不思議な擬似家族。幕末からバブル前夜の東京の歴史が凄い。2014/08/15

桜もち 太郎

12
東京の埋め立て地に何故か惹かれる昭三。そこで出会ったのはバイクに乗る若い女。二人は磁石のように吸い寄せられた。女とともに「夢の島」を彷徨う昭三。そこで見たものは釣り糸と樹木に絡まれ逆さになって死んでいる多くの鳥たちだった。その光景は昭三の後を占うものとなる。なぜ昭三はゴミ集積地に心惹かれるのか。この小説の大きなテーマだ。妻に先立たれ仕事もそこそこできる中年期を過ぎた昭三。一見ゴミという「廃墟」が昭三の心と重なり負の物語のように思える。しかし読書中は負を逆転する高揚感を得る不思議な体験をすることができた。2018/09/22

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