講談社文庫<br> 避暑地の猫

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講談社文庫
避暑地の猫

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  • サイズ 文庫判/ページ数 243p/高さ 15X11cm
  • 商品コード 9784061841833
  • NDC分類 913.6

内容説明

清澄な軽井沢の一隅に、背徳の地下室はあった。そこでは全ての聖なる秩序は爛れ去り、人間の魂の奥底に潜む、不気味な美しさを湛えた悪魔が、甘い囁きを交わすのだ。尊敬する父も、美しい母も、愛する姉も、そして主人公の少年も、そこでは妖しい光を放つ猫となる。だが、この作品で猫とは何か―?

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

takaichiro

109
一気読みのミステリー。ジャケ買いとタイトルの雰囲気からのんびりした避暑地の物語と思いきや・・・人間の奥底に潜む悪を極限まで浮き彫りに。軽井沢に別荘を持つ金持ち家族と使用人の埋まらない相互の嫌悪感から物語は始まるが、嫉妬、金欲、情欲、支配欲、殺意などありとあらゆる負の情念が全編にわたり溢れ出てくる。筋だけ追えば息苦しいが、荒涼と霧に包まれる軽井沢の風景描写は美しく、読み終えるまでのモチベーションを支えてくれた。韓国ドラマの様な愛憎の多重構成だが安っぽい感じはせず、輝さんの筆力に脱帽。時間をおいて再読したい。2020/01/23

遥かなる想い

107
この時代の宮本輝は本当によい話を書いていた。怪しげな地下室も含めて、久しぶりに筆力のある作家に出会えた、と思ったのは錯覚だったのか。2010/04/28

小説を最初に書いた人にありがとう

81
初の宮本輝さん作品。人の心の奥に問いかけるような難しい作品ですね。読み進めるのが怖いのに先を知りたい。人はどこまで堕ちるのか!?とまで考えてしまった。 後半を読み残し、旅行の予定で軽井沢に来るのが決まっていたから、舞台となる軽井沢で読了しようと決めて本日達成。 この別荘地のどこかに件の豪邸はあるかもと妙な臨場感とともに完。2014/04/29

chikara

72
強烈な印象が残っている作品。何年ぶりの再読だろうか。宮本作品でも異色の極み。また、凄まじさの極みでもある。 『人間の作った法ではなく、ぼく自身を成している法が、必ずぼくを裁くだろう。』 父の燃える虚構が頭に残る。我欲を焼き尽くす事は可能なのか。 もう一度読もう。10年後に。2015/04/03

あつひめ

67
非日常的な避暑地、軽井沢。非日常だからこそ靄のかかった景色が似合いその中でその悪の姿をさらさないで物語が続いていくような爽やかさとは逆の道をたどる物語だった。人の欲望はどこまでも底なし。もっともっとと欲を出す隣りには必ず憎しみが寄り添っている。表紙の絵が清々しいだけに物語の中の人の心の濁った情景がより一層際立っている気がした。長い年月を追われながら問い詰められ過ごす時の言葉を読みながら「僕」と言う人間の心の闇に灯りは灯るのかとそちらに気がいってしまった。宮本さんの憎悪の描き方の美しさに脱帽。2012/10/12

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