出版社内容情報
松本 清張[マツモト セイチョウ]
著・文・その他
内容説明
女王卑弥呼は殺害された―。北部九州は魏の《コロニー》であった―。過去の学説研究に精細な検討をくわえ、新しい邪馬台国像をうちたてるべく、著者はユニークな史眼をもって果敢に挑む。通説という罠は見事に駆逐された。本書には邪馬台国の真実の相が、鮮明な印象と迫力を伴って浮彫りにされている。
目次
1―神仙的「倭人伝」
2―「倭」と「倭人」
3―虚と実
4―倭の女王
5―北部九州のなかの漢
6―ツイタテ統治
7―外交往来
8―南北戦争
9―信仰風俗
10―女王国消滅
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
レアル
50
この著者の古代史シリーズの1冊目は邪馬台国。書物は都合よく書き換える事が出来ても、考古学(発掘して出てくるもの)は嘘つかない!との事で古墳からの解き明かしを目指したんだろうけど、それでも決着がつかないのが邪馬台国。でも邪馬台国は九州説で良いのではないかと思う。著者の推理諸説張りの検証とっても楽しい。2021/09/29
mazda
37
日本には日本書紀、古事記といった歴史書があるにも関わらず、多くの歴史家が魏志倭人伝を引用しており、作者もその一人のようです。日本書紀、古事記は、時の権力者が書いているので事実が改ざんされている、と言いますが、じゃ、魏志倭人伝に真実が書かれている根拠は、と問いたくなります。そもそも、日本の歴史書に邪馬台国や卑弥呼の記述がない中、九州なのか近畿なのか、という論争をすることがとても滑稽に思えますが、この点についても、中国の歴史書にある距離の記載はどうでもいい、と都合のいいように解釈してるし。どっちなの?2017/04/12
KAZOO
37
晩年近くになってご自分の昔からの夢であった歴史についてシリーズとして書かれたものです。従来の学説にあまりとらわれずに、自由な感じで書かれています。私は日本史も好きですがこのような清張さんの世界もあってもいいのではないかと思って読んでいます。私も自分なりの歴史の本を書きたい気がしてきます。2014/11/14
みのゆかパパ@ぼちぼち読んでます
20
作家・松本清張が邪馬台国の実像の解明に挑んだ一冊。「魏志倭人伝」の記述を、当時の他の文献や発掘された遺跡などとの関係から読み解き、邪馬台国や卑弥呼の謎に迫っていく様子はミステリーを読んでいるかのように興奮させる。決定的な証拠がないために推論にとどまっている点もあるが、個人的には通説よりも引きつけられ、なるほどと思わされる点が多かった。単に邪馬台国の場所の特定に終わらず、当時の日本の勢力構図や生活実態に目を向けているところも面白い。専門的で理解しづらいところもあるけれど、古代史に興味がある人はぜひ。2011/08/06
kk
17
図書館本。玄人はだしの古代史研究で知られた往年の大作家・松本清張。そんな彼が渾身の情熱を傾けて古代史の復元に挑んだシリーズの第一冊が本書。先生一流の「史眼」を駆使して邪馬台国の謎と格闘。特に興味深い切り口としては、○倭族は日本と半島の両方に分布し、海峡を股にかけて活躍、○北九州倭人の政治の中心は伊都国であり、邪馬台国は宗教祭祀の中心、○中国が九州北部を事実上直接支配、○卑弥呼は『金枝篇』的事情で殺害された、などなど。ところどころ独断的な語り口が気になるのもご愛嬌。ユニークな問題意識を楽しめました。2022/08/28