内容説明
大破局のショックで部分的記憶喪失に陥った如月烏有は、寺社に繰り返し放火して回復を企る。だが焼け跡には必ず他殺死体が発見され、「次は何処に火をつけるつもりかい」との脅迫状が舞い込む。誰が烏有を翻弄しているのか。烏有に絡む銘探偵メルカトル鮎の真の狙いは。ミステリに遊戯する若き鬼才の精華。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とも
26
★★★★『夏と冬の奏鳴曲』からの続きもの。和音島から生還した烏有だが、その後島での記憶を失ってしまっていた。そばにいる美少女の彼女 舞奈桐璃は、しっくりとこない。取材で出向いた画家の巫女神の弟子 わぴ子は、昔の彼女怜子に瓜二つであるが故が、惹かれていく。そんな一部記憶は失ってはいるなか、安穏な生活を送っている烏有ではあったが、ある夜目が覚めると灯油片手に深夜の神社に。そうして、火を付けて、放火してしまう。登場人物も木更津悠也、メルカトル鮎、美袋とフルメンバーが勢ぞろいの当作品は、それだけでも読む価値あり。2019/04/17
🐾Yoko Omoto🐾
26
この独特な世界観、読後のやりきれない感じがなんとも刹那的。これは麻耶さんの作品を好きでない人にはまったく理解できない作品かも。今作は特に、日記風の叙述が相乗効果となって、推理云々というよりも烏有のある種猟奇的で複雑な、内面の葛藤や妄想がメインになっている。奏鳴曲の時もそうでしたが、ここまで極端でなくても誰しもが少しは持つであろう心理描写に共感。 藤岡の話は後で何かにつながる?あと、桐璃の妊娠は日が合わないのも気になり…。また何故メルは烏有にあんなことを…と謎は深まるばかりです。モヤッと×3(笑)2013/06/06
igaiga
23
初期の麻耶さんの本はまだまともだろうと勝手に思って手に取ったら麻耶さんは初期のころから麻耶さんだった。それ以外なんと書いたらいいのか・・・(´-ω-`)藤岡さんはかわいそうだった。そして動物虐待反対(T_T)2017/04/12
山田太郎
18
なんだかよくわかんないというかいいのかこれでと思いつつ、途中までは面白い気もするが、最後はなんだこれというか。くせになる作家ではあるような気がする。2011/04/19
クライゲッコー
14
時系列で言えば、前作『夏と冬の奏鳴曲』の直後で『翼ある闇』の只中のようである。 前作に引き続きの主人公如月烏有本来の性格のためか全体的に鬱々としていて、『人形館の殺人』を思い出しながら読んだ。詰まらないわけではないがいまいち盛り上がりに欠けるためか、烏有の抱える記憶喪失と同じようにぽっかり穴の開いたような感覚を覚えながら読了。始めから最後まで覚えたこの感覚こそが、まさに痾ということだろうか。 今作にも木更津悠也、メルカトル鮎が登場するが端役。2021/09/25