内容説明
中世封建社会が確立するにつれ、乞食非人・河原者などと呼ばれる人々が卑賎視の対象となってゆく歴史的条件とは何か。農耕を中心的生業とする共同体は外来者への警戒、内部規律の徹底によって結束を強めてゆく。また穢れの観念、物忌み意識の深化が生み出す同一階層内での排除。やがて近世的身分制度に組み込まれてゆく賎視された人々の実相を読む。
目次
3 差別と触穢思想(中世における卑賎観の展開とその条件;中世の触穢思想―民衆史からみた;中世民衆史における「癩者」と「不具」の問題―下剋上の文化・再考)
(「河原者」の定義と「散所」研究の動向;鈴木良一著『応仁の乱』にみる「人民」「よけいもの」観についての感想;河原者又四郎と赤―民衆史のなかの賎民)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ノルノル
2
下巻は中世の差別、卑賎観、觸穢思想の論稿をまとめたもの。この領域は、脇田研究という傑作を我々はすでに得ているので、もはや流しで読んでもかまわない。ただ、癩/レプラの問題はまだ研究史的に重要な位置にあると思う。それと個人的に西洋中世のレプラについて調べているので、比較として押さえておくにこしたことがない論稿だと思う。2021/11/27
こんがら童子
1
全巻を通してあまり印象に残る論点ではなかった気がする。それはおそらく林屋辰三郎崇拝的な部分が随所に見られることに起因するのだろう。林屋の功績は確かに大きいけれども、あまりそれを意識するが故に、読み手の印象として論点よりそちらの方が気になり、論点の印象が薄く低くなるのかもしれない。二番煎じ的でさほど勉強にはならなかった。2010/06/18