内容説明
私たちの周りで美しく舞いながら飛ぶ蝶。人間と蝶の間には、密接で深い、意外な関係が存在する。一分間に数千匹が山を越え移動するイチモンジセセリ。日本列島をさまよいながら生きるウラナミシジミ。外国から海を越えてくる蝶、また、海面で昼寝をする蝶。なぜ旅をするのか、どのくらいの距離を動くのかなど、本書は、謎に満ちた蝶の不思議な生態を解き明かす。
目次
第1章 豊作を告げる蝶
第2章 さまよいながら生きる
第3章 モンシロチョウの歴史
第4章 迷蝶
第5章 供給地の実態―フィリピン群島の旅から
第6章 都市化と蝶相の変遷
第7章 蝶の地理学
第8章 氷河時代
著者等紹介
日浦勇[ヒウライサム]
1932年、徳島県生まれ。九州大学農学部農学科卒業。元大阪市立自然史博物館学芸課長。1983年没
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感想・レビュー
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うた
12
蝶と言われて思い浮かべる柄はなんだろうか。アゲハ、クロアゲハ、そしてモンシロチョウ。さてこのモンシロチョウは果たして日本古来のものか、それとも外来種か。古文書や呼び名、食べ物に生息環境等々、じっくりと積み上げて仮説を検証していく様は十分に刺激的ですね。2016/04/03
壱萬弐仟縁
3
1973年初出。Natural Historyは博物学と邦訳された(3ページ)。自然史ではないようだ。恩師の佐藤先生は、鳥羽市菅島におられたが、そのご当地の蝶は「オキノメカンチ」と称するようだ(20ページ)。評者は菅島までは行ったことがないが、鳥羽までは行ったことは3回くらいある。さすがに蝶への興味はないが、蝶のように自由に生きれればいいかもしれない。181ページの地図は蝶の生(棲)息地域がわかるもので、フィリピンが登場している理由がわかる。迷蝶。日本社会も隘路に陥っているが、いい方向へ導いてほしいもの。2013/01/04
inarix
1
世代を継ぎながら長距離を集団移動する蝶がいる。 何千、何億もの群れをなして旅をする蝶がいれば、外国から迷い込んでくる蝶がおり、また、海をわたり、時に海面でまどろむ蝶がいる。 その不思議な行動は農耕や開発などの人為と深くかかわるという、謎に満ちた蝶の不思議な生態を解き明かす。2013/07/24
Ryoichi Ito
0
蝶から見た日本列島の自然史。ヒトと自然とのかかわりがチョウを通じて明らかにされる。刺激的な観点だ。1973年の本とは思えない。2015/09/01
yamakujira
0
1970年代に書かれた文章なのに、古さを感じさせない魅力がある。表紙のツマグロヒョウモンは、いつのまにか東京でもふつうに見られるようになったなぁ。 (★★★★☆)