内容説明
旧約聖書を生んだユダヤの歴史から説き起こし、真のイエス像と使徒たちの布教活動を考察。その後の迫害や教義の確立、正統と異端との論争、教会の墜落と改革運動など、古代から中世を経て近代、現代に至るキリスト教の歴史を、各時代の思想、政治・社会情勢のなかで、いきいきと描く。一般の教会史や教理史とは対照的に世界史におけるキリスト教の歩みと影響を論述し、真の信仰のあり方を問う力作。
目次
序論(聖書について;イスラエルの宗教)
本論(キリスト教の成立;古代から中世へ;中世初期;中世中期;中世末期;宗教改革 ほか)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
50
旧約聖書の時代から現代まで、キリスト教の主に思想史を概観できる本。キリスト教が成立して広がっていった古代から、教皇権が確立しゲルマン民族と結び付いた「霊的権威と世俗的権威」が並び立つ中世、人間の「意識の交替」があったルネサンスを経て近・現代へという流れのなかでの神と人のあり方の変化は、世俗的な権力はもちろん、文学や化学などとも密に関係していて、西洋文化の基礎の部分にキリスト教があって、切り離せない存在であることが実感されます。ルネサンスが文化・思想的にも社会的にも本当に大きな変化だったことが印象的でした。2017/04/10
maki_kus
14
神学家である著者が1995年に発行したキリスト教通史。キリスト教の成立から中世、近世、近代、現代(ただし1990年台まで)にいたる教会史、哲学史、思想について概説しています。著者は、本書を評して「客観的なキリスト教史ではない」と序文にて述べておられますが、内容は努めて中立的に見えます。カトリック、プロテスタント、東方正教ともに思想の変遷、意義とともに問題点の指摘箇所も多いです。宗教における権威の絶対化、客観化は殺戮、迫害に連なる害悪であり、それは現代に通じるとの看破は的を射ているように思えます。良著です。2015/10/10
Yuzupon
12
非信徒が見てもげんなりしない冷めた視点が好印象。冷笑的に感じる部分すらある。趣味の文学や芸術、歴史を見るためには、折に触れてキリスト教の歴史を参照しなくてはならなくなるので、一冊で要点がおさらいできる本書の存在は有難かった。本棚に一冊あると便利。東ローマ帝国圏内の記述の詳しさが個人的に有難い。2013/12/21
おはぎ
11
特に西ヨーロッパにおけるキリスト教の歴史を記した本。タイトル通り全てのキリスト教史をこの厚さで記載し切るのは無理なのは分かっているので問わない。途中からヨーロッパ哲学史になっていく気がするのもやはり「西洋思想」と「キリスト教」が密接不可分な故だろう。近代合理主義の克服としてのキリスト教がますます注目されるという最後半部分は特に面白い。ここからもっと個別にフォーカスを当てたキリスト教の本を読んでいきたい。(個人的には初期キリスト教と近代のバルトあたりを)。2024/04/14
無重力蜜柑
11
ユダヤ教の成立から現代神学(1980年頃)までを概観するキリスト教史。原始教団時代、ローマ帝国後期での拡散、教会の東西分裂、中世のスコラ哲学や教皇権の最盛期、宗教改革。この辺りまでは世界史で多少なりとも触れるので漠然としたイメージはあるのだが、啓蒙主義時代やその後の実証主義、ドイツ観念論との結びつきの中でキリスト教がどう発展したかという話は知らないことばかりで面白かった。かなり駆け足ではあるが、その分大局的に見れて良い。なお、東方正教は最後にちょろっと触れられるだけ。思想的交流はほぼなかったのだろうか。2021/01/30