内容説明
儒家の人為の思想を相対差別の元凶として否定した老子は、無為自然を根本の立場として不争の哲学を説く。荘子はなお徹底して運命随順を志向し、万物斉同を根本思想とした。著者は老荘の微妙な相違を検証しながら「道」と「無」に収斂される壮大な思想体系の全貌を明証する。宇宙の在り方に従って生きんとする老荘思想の根本的意義と、禅や浄土宗などを通して日本人に与えた多大な影響を照射する好著。
目次
1 老荘の思想
2 老子と荘子の生涯
3 老子・荘子の書
4 老荘思想のその後の展開
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
阿呆った(旧・ことうら)
16
老荘思想について、時代背景や両者の違い、道教、仏教と癒着した民間信仰まで。厚めなのに、読みやすい奇跡の一冊■『足ることを知らないことが最大の災禍』by老子■『心に憂楽がないことこそ、得の極致』by荘子 ■凡人の私には、なかなか実践できないけれどね。。。2016/10/02
まふ
14
老子、荘子を夫々原典で読んだが、このような解説を読むと一段と理解が深まる。特に「老荘思想のその後の展開」の章が勉強になった。仏教に強く影響を与え、それがとりわけ、禅、浄土宗に色濃く反映されていることがきわめて明快に理解できた。親鸞の教えが独自の道を辿って荘子の哲学に行き着いたというのも面白い。著者の最後の言葉「神を失った現代人にとっては、神のない宗教を待望するしかない。それに応えるものの一つとして荘子の哲学がある」は同感できる。私も荘子を読んで、荘子の哲学が最後の砦、開き直りの手段であると直感的に思った。2001/01/08
isfahan
9
蒙が啓かれた。注目すべきは浄土宗、浄土真宗への老荘思想の影響を論じた部分。浄土真宗、親鸞って他力思想がキリスト教と似てるからなのか、日本の近現代知識人に特別視されて近代西洋的に解釈されたり、論じられたりすることが多いが、なんでそんな思想が日本に生まれたのかわからないし、こじつけ的というか得心のいかないことが多かった。森先生が言うには浄土宗は最も中国化した仏教。無為自然を理想とする老荘の影響を受けてるんだから「一切のはからい」=人為を捨てる方向に進むのは当然の話とのこと。2012/06/10
nori_y
6
「哲学」という文字を見ただけで「げぇっ」と思う私ですが、本書は老荘に関して余す所なく解説されていて且つ比較的平易な文章であると感じました。流石に『荘子』の訳と解説の項は三度読んでも分かった"ような気"にしかなれないと言うことを繰り返して読破に時間がかかりましたが…荘子曰く文字で表されてる時点で残りカスだそうなので、まあ、良いかな。学校でもしこたま「無常観」を教え込まれた身としては、老荘思想って仏教に似てるな(ざっくり)と思っていたのが色々と納得できました。本書の本領は恐らくこの仏教との関わりの部分でしょう2018/07/21
youmaysay
6
原文・訳文・注釈のようなもののつもりで購入したが、それは一部で残りは歴史的背景・著者・他の宗教(特に仏教・道教)との関係などの詳細な解説だった。結果的には興味深い内容で満足。特に仏教における空と老荘思想における無の親和性や、仏教が中国で理解されるために老荘思想を介する必要があったなど膝を打つ観点だった。2017/06/25