内容説明
古来、軍人として、また文人としても高く評価されてきた古代ローマの英雄カエサル。彼は形骸化した共和政から帝政への道を拓いた大政治家でもあった。ケルト人やゲルマン人と戦ったガリア遠征の赫々たる戦果をもとに、中央政界での勢力を拡大したが、「一人支配」体制の完成直前に暗殺される。その波乱万丈の生涯は、歴史的転換期に変革を進めた人物の悲劇を物語る。ローマ史の泰斗による必読の好著。
目次
はじめに カエサルの顔
第1章 政治のしくみ
第2章 政界進出の道
第3章 若きカエサル―自負心
第4章 政治家カエサル―段階をふんで
第5章 ローマ最高の政務官として
第6章 軍人カエサル―運命の寵児
第7章 ガリア戦争点描
第8章 サイコロは投げられたり
第9章 東奔西走の日々
第10章 一人支配の確立
第11章 独裁者カエサル―「お前もか、わが子よ」
付論(二つのカエサル像;カエサルの孤独)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
masabi
26
【要旨】ローマの政治家カエサルを扱った概説書。歴史書と伝記の中間くらいの位置付け。【感想】読む前はカエサルのことを不世出の天才かと思っていたが、読後は自分の野心や理念に忠実に行動していったことでチャンスをものにした行動の人だという人物像になった。制度上の都市国家と現実としての帝国の矛盾に対して同時代に唯一独裁という解答を示したあたり現実主義と理念のバランスがとれていたように思える。カエサルの評価は賛否両論あるそうで他にもあたってみる。それにローマ史についてももっと理解を深めたい。2016/11/14
またの名
12
徒競走のお祭りで共和国ならタブー扱いの王の印を差し出されて拒否するカエサルに対し逆に人々から万雷の拍手が送られた時にはもはや尽きていた、共和政の命運。有能だからこそ進む個人崇拝の動きに危機感を抱き独裁回避のためと暗殺を決行したアンチ達の狙いとは裏腹に、死んだカエサルは新しく皇帝Caesarという称号として甦り共和国を永久に滅ぼしてしまう。良く評価するか否かの振れ幅が大きい歴史的政治家を扱う著者は、どちらも著者の師匠にあたる高評価派と低評価派の両教授の意見相違などを念頭に置きつつ、読ませる物語に仕上げる。2019/01/29
BIN
3
カエサルの解説本。ガリア戦争や内乱については他書で触れているというので、これも簡単にしか触れられていないので、ローマ人の物語等で前提知識を得ておいたほうが良い。塩野さんのカエサルに比べると、より現実主義的で私欲が強く、癇癪持ちなカエサルに見えた。最後の補記の名将で名筆家ではあるが、大政治家ではないのではというところはなかなか衝撃的でした。2014/05/22
刳森伸一
2
当時の状況を踏まえながらカエサルの行動を丹念に追っていくことで、カエサルの実情に迫る。初心者用に書かれているだけあって分かりやすいが、上っ面をなでるだけのものとも違い、非常に刺激的。カエサルの宥恕は孤独の裏返しであるという主張は説得力があるように思える。2015/02/18
鮭
2
塩野女史のカエサル観を読んだ方へ是非薦めたい。どちらが正解という訳ではないが、学者から見た「カエサル」というのも微妙な違いが出ていて面白い。あとがきにある戦後のカエサルの能力に関する研究についての論争は彼がいかに魅力的な人間であったことを後世に如実に示してくれる事象である。2011/08/09