内容説明
民衆に育まれてきた日本仏教の真の姿をとらえるためには、従来の仏教学はあまりにも民俗学による発見を無視して自己を主張し、民俗学もまた仏教学の蓄積を白眼視してひとり歩きをしているのではないか、と著者は危惧する。仏教に根ざした日本人の生活習慣や年中行事や民間信仰などを考察し、また外国人の信仰行動などとの比較検討を重ねて、仏教学と民俗学との緊密な関係の確立が今こそ急務と説く。
目次
彼岸と常世
花祭りと灌仏会
除夜と節分
地獄と冥土
極楽と浄土
お盆と施餓鬼
葬法とお墓
先祖崇拝と供養
地蔵と道祖神
観音信仰と不動信仰
巡礼と遍路
仏教宇宙と民俗世界〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Arisaku_0225
16
ここ1年民俗学系の書物に手を出してみたが信仰に関しては多くの書物は仏教についてあまり触れられず多くが神道系のものばかり出会った気がする。本書でもはしがきにあるように、「民俗学」と「仏教学」の橋渡しとなるような本で死生観、葬式、行事など25に分けてエッセンスが散りばめられている。途中日本だけでなくインドや中国、果てはキリスト教圏の諸文化とも比べられてたり、博物館の論争(現地に置くか否か、実物かレプリカか)などもあり興味深く読めたがいかんせん仏教についてうと過ぎて肝心の仏教部分の理解が出来ていない……2022/12/21
佐倉
14
仏教と神道や山岳信仰のような日本の土俗的なもの。近代から現代を通して分断されてきたこの二つを実は別ちがたいものとして読み取っていく。純粋な仏教とか純粋な神道みたいなものは取っ付きやすいが、それらが入り雑じる山岳信仰みたいなものの方が日本の信仰を考える上で重要なのでは?と思い始めて来た自分としては興味深いテーマ。魂が山に沿って昇るという考え方、インドの須弥山信仰、来迎図、曼荼羅の遷移、日の沈む西への信仰と西方浄土、海への補陀落渡海…と様々なテーマの概論が展開されていく。2023/06/13
mittsko
11
面白い!流石の山折節!アカデミシャンというより学者寄り文人… こういう書き手はいま、本当に全然いないんじゃないかな。宗教学者のあり方として、今もゆるぎない正解のひとつだなぁ…(*´ω`*) ※ 93年刊。日本と東アジアとインドと世界、仏教の超地域的な広がり、そして、日本列島地付の民間信仰ないしは民俗… それらを縦横無尽につなぐ。NHK市民大学での講義「日本の仏教と民俗」の記録、全12章を前半におき、後半は、各所で発表済みの関連する小文13本を集める。前半は通読で、後半はお好きなところからご自由に。2021/02/24
moonanddai
10
久久振りの投稿で、肩ひじ張らずにいこうと思います。再読ですが、初読のレビューを読み直すと、肩ひじ張り張りです。本書は市民大学のテキストだったり、折々のエッセイ風のものだったりですので、今回は気楽に読ませてもらいました。骨にこだわる日本人の心象が、さほど古いものではない(平安後期くらい)にも関わらず、やくざ社会の「骨咬み」など深いもののであること、東大寺の大仏殿の須弥壇で発見されたという「聖武天皇の骨」が行方不明になっているという話、平将門とトーマス・モアの首にまつわる洋の東西の違いなど、面白く読めました。2023/07/11
moonanddai
10
「仏教」と「民間信仰」がある。柳田国男は、民間信仰から仏教的要素を取り除いていったところに「固有信仰」があるといった趣旨の発言があったらしい。私は逆に仏教から民間宗教の要素をはぎ取って行ったところの、なんというか「生」の仏教みたいなものを重視していたのではないかと思います。ただ、日本の仏教は日本の様々な「生き方」みたいなものが織り交ぜられたもので、やはりインドや中国の仏教とは違うけどやはり仏教なのです。身の回りにある仏教といったものも起点に考えていかなければならないのでしょう、今更ですがそう思いました…。2018/05/10