出版社内容情報
佐藤 信夫[サトウ ノブオ]
著・文・その他
内容説明
アリストテレスによって弁論術・詩学として集大成され、近代ヨーロッパに受け継がれたレトリックは、言語に説得効果と美的効果を与えようという技術体系であった。著者は、さまざまの具体例によって、日本人の立場で在来の修辞学に検討を加え、「ことばのあや」とも呼ばれるレトリックに、新しい創造的認識のメカニズムを探り当てた。日本人の言語感覚を活性化して、発見的思考への視点をひらく好著。
目次
序章(レトリックが受けもっていた二重の役わり;レトリック、修辞、ことばのあや)
第1章 直喩
第2章 隠喩
第3章 換喩
第4章 提喩
第5章 誇張法
第6章 列叙法
第7章 緩叙法
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たかしくん。
36
「レトリック」なる定義がしづらく、かつ、どこか悪意性を帯びたイメージの強い概念を、真正面から論じた秀作と思います。古代よりレトリックとは、《説得する表現の技術》と《芸術的表現の技術》の、相反しかねない2つの役目があり・・・。以降、比喩をいくつかの技法に分類してますが、まず登場した「直喩法」。最も安直と思いがちですが、例えば川端康成の「雪国」にかかってしまえば「駒子の唇は美しい蛭の輪のように滑らかであった」なんて、読者が試されるケースまで至るのですね。他、私には、最後の「緩徐法」が最も洗練されてますかね。2015/04/20
ミエル
34
文章を読み書きする上でのデコレーション、センスと知性が問われる重要な修辞(レトリック)に関する歴史、分類から活用事例までをサラッと解説する名著。すべての学問において、これだけ明解な入門書はあまりないだろうな。特に、修辞の様々な種類の例文として取り上げる作品が秀逸。構成上、古典から当時の現代文学まで幅広い文例を読み齧るため、ご無沙汰な作品や作家に出会えるのも嬉しいかぎり。井上ひさしや太宰なんて抜粋された例文なのにグッと来てしまった。読書欲を刺激する贅沢な読後感。2018/12/13
田氏
29
講談社学術文庫のタイトルって、なんでこうもつまらなそうなんですかね。そこにDIO様のごとく惹かれるあこがれるのですが(直喩)。まあタイトルなんて飾りです(隠喩)。でも、得てしてその飾りこそが大事だったりして。それどころか、飾ることでかえって飾られているものの姿を鮮明にしたり、飾られていない別のものに意識を向けたり、飾りそのものについて考察させたり(列叙法)。この本が論じる飾り(提喩)にも、そんなところが無いとはいえない(緩叙法)。文章読本というよりか、哲学書めいた趣があるので、読むと鼻血出ます(誇張法)。2021/06/25
とうゆ
25
◯レトリックを基礎的なところから広く深く学ぶことが出来る。普段何気なく使っている表現が、巧みなレトリックに溢れていることを知って感激。かなりのおすすめ本。2015/04/23
ヨッフム
21
詭弁としてのレトリックではなく、感覚を発見するためのレトリック!これは、とても勉強になる本でした。人は、言葉にならない経験をした時、比喩を用いたり、擬音を使ったりして、無限の感覚に対処しようとします。有限の言葉を無限に組み合わせ、そこに無いものを創造し、それに説得されてしまう、そのメカニズムとは何か?直喩、隠喩、換喩、提喩。比喩だけでも様々な種類があり、それぞれ古典の名文とともに解説しながら、レトリックとは何か?を精査する、意欲的な評論となっています。言葉のインターフェースとしての有用性に、強く感謝。2014/11/24