内容説明
激動の昭和が終わり、長く世界に君臨してきた共産主義が崩壊する。私たちの目の前でいま歴史の大転換劇が進行しつつある。この後文明はなお繁栄し続けるのか、それとも衰亡への歩みを辿ることはないのだろうか。世界史の新時代を生きるために、終わりつつある出来事を整理し歴史に学ぶことから始めよう。著者のくもりない史眼、成熟した哲学による歴史叙述こそ、有用な情報と深い叡知の宝庫である。
目次
第1章 2つの異質の普遍主義(懸念に満ちた普遍主義;明るい普遍主義)
第2章 2分化された世界(ソ連の膨張;冷たい戦争;平和共存への道)
第3章 自立性への試み(中ソ対立;復権を志すヨーロッパ;世界政治におけるアジア・アフリカ諸国)
第4章 分水嶺の年―1971年(中国をめぐる諸変化;デタント;相互依存の苦悩)
終章 リフレイン(ペレストロイカへの帰結;普遍主義の時代の終わり;1つの終わりと1つの始まり)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
coolflat
11
ヤルタからマルタへ。冷戦は1945年のヤルタ会談から始まり、1989年のマルタ会談で終結するが、本書はこの冷戦史を扱っている。個人的には、ソ連と東欧諸国との関係が曖昧だったが、そこが本書により鮮明になった。例えば1948年になぜチェコクーデターが起きたのか。それはチェコスロバキアが東欧諸国の中で、共産党独裁ではなく、議会が正常に機能している唯一の国であったということにある。クーデター前年のマーシャルプランにチェコが賛意を表したため、勢力圏を切り崩される脅威を感じたソ連は、クーデターを強行したというわけだ。2016/01/22
mittsko
5
1989年刊。疑いのない名著! ただし、歴史記述の体裁が中立客観性を演出する点には注意が必要だ。例えば、米国の総体的理解=解釈に、ボクは即座には同意できない。親米原理主義では無論決してないのだが、それにしたって楽観的、好意的な見方が多すぎないだろうか(´・ω・) よしんば高坂先生の主張を受け入れるとして、では米国は変質したのではないか、という見方はどうか… この辺り、専門家の意見を聞いてみたい(が、この業界、イデオロギーバリバリの私感を聞かされるだけなのかな… つらい) 国際関係論って、まぁそういうもの…2017/11/21
乙郎さん
2
冷戦構造の終着を機に冷戦時代の各国の政治動向について捉え直した書で、かなり分かりやすくまとめられていると思う。特に、冷戦構造の軸となるアメリカとソ連のイデオロギーの対立について論じた「第一章_二つの異質の普遍主義」は目から鱗だった。2009/03/26
さんとのれ
1
第二次世界大戦後、その戦後処理から徐々に浮かび上がってくる二つの普遍主義の対立。政治、軍事、金融、異なる各国の思惑などが絡み世界中を巻き込んだこの対立はソビエトの崩壊で一区切りを迎えたが、それに続く次の時代もハッピーエンドからは程遠い。2022/09/29
void
1
【★★★☆☆】'89年。対象は41年から89年の、主として冷戦期、ということで米ソがメイン。本書の4/5弱が分水嶺である71年より前の記述となっている(本書は'73年の本の一部を加筆したもの)ように、そこに至るまでの記述は割と厚く、アクターの特徴を押さえどういう思惑のもとに行動していた、外在・内在状況はどう影響したのかなど説得的。2012/09/05