内容説明
著者は若き日の小学教師の経験を通し、ふるさとに関する知識や理解を深めることが、子どもの人間形成にとっていかに大切であるかを生涯にわたって主張した。本書は日本人の生活の歴史を子どもたちに伝えるため、戦中戦後の約10年間、日本各地歩きながら村の成り立ちや暮よし、古い習俗や子どもを中心とした年中行事等を丹念に掘りおこして、これを詳細にまとめた貴重な記録である。民俗調査のありかたを教示して話題を呼んだ好著。
目次
1 ほろびた村
2 人々の移動
3 今の村のおこり
4 村のなりたち
5 暮らしのたて方
6 休みの日
7 ひらけゆく村
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あきあかね
26
文字や記録には残らない、普通の人びとの生活や文化。村の成り立ち、農作業や年中行事、食、住まいー日本各地の村々を歩き回り、放っておいたら消えてしまう土地の記憶を渉猟する。 今から70年ほど前の話であるのに、村々にはまだ昔の暮らしが息づいていることに驚く。揖斐川の谷の奥、雨宿りした農家のおばあさんは、若い頃に大垣まで行ったことがあるだけで、七十年の間村を出たことがなく、夏は焼き畑づくりをし、冬は雪の中で、ひっそりと生きてきたと言う。 交通や通信、電気、ガス、水道等の便利なインフラが整った現代から見ると⇒2020/12/18
Akihiro Nishio
22
戦後、社会科の授業が創設されるにあたり、子供や教員に対して、人々の生活から何をどうやって学べばよいのかをわかりやすく記した本。非常にわかりやすく要点を示しており、すぐにでも使えそうな気がする。しかし、わずか60年程度しか経っていないのに、今となっては、本書で記された方法では、地域の歴史を辿るのは困難だろう。それほど短期間で社会が変わってしまったのかと驚く。自分としては、家の姓の広がりという項目が一番面白かった。鈴木という名字が熊野の社の神職をルーツにしているとか面白い発見だった。もっと詳しく知りたい。2016/09/12
いの
15
とても興味深い本でした。今は亡き民俗学者宮本常一先生の書かれた本です。何を知ることができたかというと、私達の祖先がより良い生活をおくるために励んで協力しあい生きていたという事です。古いならわしにも意味があります。生活は変わり今では目新しいものの陰になり気が付けば消えていっているものもあります。今は衰退し誰も住んでいない自分の生まれた場所を懐古しながら読みました。貴重な本だと思います。2019/01/02
三平
14
戦後、「社会」という科目が出来るに当たり、旅する民俗学者と言われる宮本常一が子供たちに、自分たちの暮らす地方の成り立ち、文化、そしてご先祖のことを思い返し、興味を持つ機会を持ってもらおうと筆をとった一冊。日本各地での様々な独自の生活や風習が発生した理由と共に書かれていて面白い。 初めて知ったことで面白かったものの一つが、猿蟹合戦でカニが柿が大きな実をつけるようにとハサミで脅しながら育てる場面のルーツ。これは実は日本のいくつかの地方、そしてイギリスでも実際に行われている風習だったということ。2015/06/05
うえ
7
「正月には、大正月と小正月と二つも休みがありました…大は公、小は私の意味があったようで、お上できめた正月と民間の正月というような意味だと思います。すると、お上できめた正月のあとから、民間で正月をきめるということは、もともとありますまいから、民間のほうの正月がもともとあったところへ、お上からきめた正月がおこなわれるようになったものと思います…大正月のほうは…あいさつまわりや、お餅をたべることが主になっていますが、そのほかに幸木をつるします。西日本に多く見かけるものです。たいてい、土間につっています」2017/04/26