出版社内容情報
【内容紹介】
本書は、夏目漱石が明治40年と41年に行なった2つの講演、「文芸の哲学的基礎」と「創作家の態度」を収める。いずれも有名な『文学論』の、いわば序論とも各論とも考えられる講演で、文学の理論と歴史を哲学的に、心理学的に根本から究明している。特に真・善・美・壮の文学の4種の理想を論じつつ、4者の価値が平等であることを強調し、真のみを重視する自然主義の文学を批判する。漱石文学理解の要ともいえる重要な講演集である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きつね
7
「いくら藤村の羊羹でもおまるの中に入れてあると、少し答えます。そのおまるたると否とを問わず、むしゃむしゃ食うものに至っては非常稀有の羊羹好きでなければなりません。」2014/03/29
R As Well
3
ある理想を描くために他の理想を著しく冒すということは、現代ではやむなく行われるという類のものではなく、傷つけることを目的として為されている(傷つけることそのものがある理想を強調させる手法として確立されている)といってよいだろう。真実の真実たるを強調するために美を汚してみせる、善を冒してみせるというのはよくある商売である。それに賛成できないというのは、ぼくもまあそう思うな。2018/03/04
悸村成一
0
「文芸の哲学的基礎」「創作家の態度」の 2編。なまなかな読書意欲では理解が及びにくい説ではあるまいか。10刷1991年。252019/02/09
ショウゴ
0
夏目漱石の思考力の高さとユーモラスな語り口を感じることができました。物我の区別についてや、意識の連続、文芸における技巧の必要性について書いてありました。講義形式でありましたが、果たして美術を志す学生がどこまでこの講義についていけたのでしょうか‥2018/05/19