出版社内容情報
【内容紹介】
日本画壇の第一人者であり、あくなき美の探求者である東山画伯が、日本の風景への憧憬と讃歌をこめて綴る随想と講演併せて五篇を収録する。少年の日から唐招提寺障壁画の揮毫に至る今日まで、遙かな旅の祈り祈りに心に映じた風景を語りつつ、自らの魂の遍歴とその芸術の秘密を明かす。祈りにも似た著者の語り口が髣髴とさせる山雲のたたずまい、濤声の響き。その清澄な余韻のうちに、日本美の根源へと読者をさそう詩的随想である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
モリー
70
これまで、なかなか入り込めず、開いては閉じるを繰り返してきました。しかし、清浄な冬の景色を眺めながら何故かこの本を再び手に取っていました。話はそれますが、趣味で身近な風景や草花をカメラのファインダー越しに見つめるようになった私は、自分が「美」を感じる瞬間に意識を集中する癖がついたようです。そして、私が美しいと感じる心は、私が暮らす土地の山や川といった身近な風景が育んだのだと思い始めていました。その思いが確信に変わりました。「日本の美」は日本の美しい風景が育んだ、美しいと感じる心と切り離せません。2021/01/02
れみ
63
日本画家・東山魁夷さんの随想と講演の内容を集めた本。どれも日本の風景や文化について触れられていて、魁夷さんの作品から感じられるのと同じ、美しく格調高く、そして温かみもある文章、そして語り口が心地良かった。これから魁夷さんの文章にも触れる機会を増やしていきたい。2015/07/29
レアル
59
まえがきに「ここに収められている随想及び講演は唐招提寺の障壁画が完成した昭和50年のものでその関連性の話が多い」と書かれている通り、講演の大半は奈良で行われたものが収められている。唐招提寺の壁画や鑑真和上への想いが詰まった本だが、東山魁夷氏の風景画にたどり着いた原点、魂のようなモノを読んだようにも思える。静寂ながら凛とした美しさを放つ東山魁夷氏の風景画。そして6月6日が近づくと、鑑真和上とこの東山魁夷氏の作品を読みたくなる。2019/05/22
Kajitt22
39
画家の唐招提寺、鑑真への畏敬の念、古代大和の日本の風景美への憧憬。若き日留学したドイツ・オーストリアへの郷愁。東山魁夷の作品の原点を記した散文・講演を集めた詩的な文章集。来年のカレンダーに東山魁夷のものを買いたしました。2021/12/27
T2y@
30
『山雲濤声』唐招提寺にて、鑑真和上の御霊に捧げたと言う障壁画を語った講演が味わい深い。障壁画そのものもだが、インスピレーションを得たと言う、能登輪島の海岸と、飛騨の天生峠にも思いを馳せた。 〝多彩と淡白、華麗と幽玄〟 自然とその色彩描写は、絵画作品に留まらない、その才を感じさせる文章表現であった。2017/07/10