出版社内容情報
【内容紹介】
日本文化は、中国文化圏の中にあって、中国文化の強い影響を受けながらも、日本独自の文化を形成してきた。著者の日本文化を見る視点は、1つは中国の歴史の専門家として、もう1つは、日本人としての立場から、その本質をするどく洞察する。本巻には、「日本文化の独立」「香の木所について」ほか、現代日本を知るには、応仁の乱以後を知れば十分だと喝破する論文「応仁の乱について」など、余人では主張しえない秀れた8論文を収める。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
紙狸
17
増補版単行本は1930年、この文庫は76年刊行。「今日の日本を知るために日本の歴史を研究するには・・・応仁の乱以後の歴史を知っておったらそれでたくさんです」。内藤湖南のこの有名な言葉を原著で読めて嬉しかった。「応仁の乱について」という講演での発言だった。日本の民衆のレベル向上に着目すれば、応仁の乱の頃が変わり目だった。神道、和歌、漢学といった様々な分野で、貴族の独占だったものが民衆に広がったという意味だ。文庫(上)を読めば、湖南自身は古代も研究していたことが分かる。2022/03/26
Haruka Fukuhara
7
昔の社会上の事情というものは今日と違いまして、何でも新しいことを開拓しようとするには、これはシナでも日本でも同様で、改革論者の多くは復古ということを考えるのが通例であります。復古ということがすなわちいつでも革新論であります。(中略)維新以前から日本に漲っていた思想はすなわち王政復古ということであります。そしてその王政復古がいよいよ為し遂げられたところが、今度は開国進取ということに変って来たのであります、いや変って行ったのではありませぬで、近ごろの言葉でいうとやはり王政復古の延長であります(日本文化の独立)2017/04/13
とまと
7
今回は精読。応仁の乱前後、乱世になって伊勢神宮の維持費を朝廷が貢ぐことができなくなると、一般人の参拝を認めてそれによって維持することになった、という点が勉強になった。2013/12/24
れぽれろ
5
日本文化についての考察、下巻では中世から近代にかけての著述が中心。上巻と同様に日本文化の外来性と独自性についての考察が主要なテーマで、古来中国文化の影響下にあった状態から独自の日本文化と呼べる状態になるまでの変遷について考察されています。とくに室町時代の応仁の乱が重視され、応仁の乱前後で日本の権力基盤が根底から変化し、合わせて一部旧文化の破壊が行われ、その後旧文化から取捨選択されたものが発展し、日本的なるものが出来上がっていたとの考え方が示されています。後世の研究に大きな影響を与えた書籍であると思います。2014/12/14
とまと
3
「応仁の乱について」と「日本国民の文化的素質」を併せて読むと良い。2014/01/23