出版社内容情報
【内容紹介】
経済的破綻に更生はありえても、文化的破綻はその民族の自滅につながる。文化的生存の道は、自らの文化を、他文化と相対化することによって再把握し、そこから新しい文化を築くことしかない、とする著者が、日本人とヨーロッパ人、ユダヤ人、アラブ人との差異を、ことばや宗教、あるいは法意識などを通してわかりやすく解明した独特の比較文化論。日本文化の特性が如実に浮き彫りにされ、私たち自身を見直すうえで絶好の書である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
イプシロン
41
「比較分化論の――」と題されているが、内実は欧米と日本における言語感覚の違い、また内面感覚を外面感覚として表現するのが下手な日本人(日本語と日本文化)にある悪弊への警鐘である。少ないボリュームで核心を突いて見せる山本の弁舌は鮮やかである。曰く、日本語は「意味あい」を重視し、欧米語は「意味」を大事にする。一長一短、どちらが優れているとは言い切れないが、何事もニュアンスで伝わると思う日本人の態度は、欧米人をイラつかせ困惑させるものである、と。欧米人にとっての神とは「かつてあり、いまあり、ありつづける」もの、2019/09/28
さきん
21
日本と一神教圏との宗教観から切り込んだ比較文化論。日本人の多くの何でも自然になるという考えがあらゆるところを占めているという指摘に納得。実は一神教圏から見れば、このような考え方は、異様で特異だそうである。また、日本で、中々討論が成り立たないのは、あらゆる異文化との接触が少なく、自らの考えを整理して、説明しなくてはならなくなる立場に追い込まれなかったことと、何でも自然になるという考えのために、概念を作って、対置することを余りしてこなかったということを著者は指摘している。2016/12/07
がくちゃびん
10
日本人が己の文化や根底にある「自然」という概念。日本人がこの概念をうまく説明できないのに対して、ユダヤ教やキリスト教、セム人に代表されるイスラム教徒たちは「自分たちの文化を相手の考え方に基づいて説明する」訓練を歴史的に繰り返してきており、日本人はその地理的特徴からその訓練をしておらず、昨今の国際社会では日本政府との交渉が困難であると評価を受ける一因という。こういった日本文化の根底を考察し、説明したのがきっと新渡戸稲造の「武士道」なのでしょうね。こちらも読まねば。2016/06/10
hit4papa
10
日本の文化と他の文化を相対化し、日本文化の特性を明らかにする試みです。他の文化との臨在感の違いや、言葉にすることの重要性、対立概念と二元論を説き、文化を再把握してそこから新しい文化を築くべきとしています。名著ですね。
Yukicks
10
当たり前がなぜ当たり前なのかを問う重要性をより理解できた。76年出版だが内容は全く古くない。98ページで口述で書かれているのですごく読みやすい。戦前の日本のアジアでの振る舞いにみられる対話なしの“よかれと思ってやっていた”おしつけ、勝手な同情、ひとりよがり、独善的に機能していたことを指摘している。 自分の考え方を、ある時代のある文化圏のある考え方と客観的に把握することができていない。2012/10/26