内容説明
アキレスと亀から不完全定理まで、かろやかに笑う哲学講義。「無限は数でも量でもありません」とその先生は言った。ぼくが出会った軽くて深い哲学講義の話。
目次
第1週 学生が二人しかいなかったこと・教室変更
第2週 気まずい時間・アキレスと亀・自然数は数えつくせない
第3週 チョコレートケーキ・パラドクスへの解答・可能無限と実無限
第4週 全体と部分・キリンとカバ・次元の崩壊
第5週 実数・独身製作器としての対角線論法・喫茶店のネコ進法講義
第6週 実数とは何か・ピタゴラスと豆大福・余興
第7週 マジタ・ベキ集合と概念実在論・羊羹の思い出
第8週 一般対角線論法・無限の無限系列・カントールのパラドクス
第9週 土手の散歩・ラッセルのパラドクス・嘘つき・自己意識の幻想
第10週 直観主義・パラドクス断罪・虚構と排中律・ブラウアーの手袋
第11週 暑い部屋・形式主義はいかにして排中律を取り戻そうとしたか
第12週 ゲーデルの不完全性定理・G・インドのとら狩り
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
62
挑発的だ! 入門書のように見えて、実はカントール集合論にもとづいた、よくある無限論をケチョンケチョンにする試み。カントールの対角線論法も、この本では「最低」か、もしくは「あさはか」(!)という扱い(笑)。先生と学生の対話・鼎談という形式で非常に読みやすく、一気読みでした。ただし最終の第12章には手こずった……。ウィトゲンシュタインも読んでみよう。2015/11/30
せ~や
59
職場の人から借り本。某マンガに描かれてる「無限」に関する理屈が、やっと言葉にしてわかりました。わりと簡単に、「無限」という言葉を使うけど、紐解いていくと非常に奥が深い。実無限と可能無限の話はとてもおもしろかったです!後半はほとんど理解出来ず、全体の半分もきっと理解しきれてない。数学は苦手なので、なかなか苦労して読みましたが、そんな僕でも比較的読みやすい本でした。数学と哲学の間のような感じです。☆3.52021/06/24
佐島楓
52
この本は小説仕立てになっている。わかりやすくしようとした著者なりの配慮なのだろうが、それでもほとんど何を言っているのかわからなかった(難しすぎて)。哲学を学ぶにも数学が必要だというこのジレンマ、初めて知りましたよ・・・。2016/02/26
禿童子
43
著者の野矢さんが楽しんで書いたというだけあって、学生二人だけを相手に研究室で出がらしの紅茶とお菓子付きの数学とも哲学ともつかない議論を冗談交じりで前期の半年で仕上げるラノベ的なお話として読めました。対角線論法というテクニックが中心主題で、カントールの集合論から始まって無限の濃度、ラッセルのパラドックス、そしてゲーデルの不完全性定理まで、あくまで考え方のさわりとでも言うのでしょうが、なんとかついていくことができました。竹内薫『不完全性定理とは何か』とは違うアプローチのようですが、はてどこが違うのかな(笑)2020/08/28
SOHSA
32
《購入本》教授と学生二人だけの哲学講義。こんな授業が本当にあったら是非受けてみたい。数学ではなく「数学の哲学」が講義科目で、ある程度難しく、ある程度易しく、また良い加減に「いいかげん」で思わず笑ってしまう場面も。硬軟あわせ持つ講義の中で、訥々と語られていく無限論は、この世界の有り様自体を語っているようで興味深かった。読後、空を見上げて宇宙の果てに思いを馳せた。2016/11/25