内容説明
「正統―異端」の枠組みを超えて、ヨーロッパの心性に影響してきたキリスト教のもう一つの地平「超異端」。その神秘の力を体現した女たちのエネルギー渦巻く中世に現れ、神話的存在となった処女戦士を、あらたな視点で描き出す。
目次
序章 ジャンヌ・ダルクとはだれか
第1章 ジャンヌ・ダルクの先駆者たち―カリスマと聖女
第2章 神の「声」を聞いた少女
第3章 中世の政治と宗教―少女戦士はいかにして誕生したか
第4章 戦場の乙女
第5章 ジャンヌの最期
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
マーブル
6
救世主でありながら異端として火刑に処された少女。 彼女そのものの姿をあぶり出すのはもちろん、聖女としての先駆者からフランス国内の政治情勢、宗教抗争まで考察することにより、あの時代そのものを見直す手がかりとなっている。彼女の生涯を思う時すぐに感じるのがその出自と成したことのバランスの悪さ。一介の農家の娘が神の声を受け、闘い、王を戴冠させる。フィクションの世界でしかあり得なそうな出来事。筆者はジャンヌ一人にスポットを当てる前に、その周辺をまずは語ることでその存在をより分かりやすくしてくれる。 2019/10/14
Takao
4
1997年1月20日発行(初版)。20年も前に求めたものだが、長らく書棚に眠っていた。だいぶ前に、中公新書の村松剛著『ジャンヌ・ダルク 愛国心と信仰』を読んだことがあるが、それとは違って、本書は歴史の本というよりは、副題「超異端の聖女」というキリスト教の信仰の話が中心テーマ。ジャンヌは、1431年、異端審問にかけられ火刑に処されるが、その25年後に復権し、のちに聖女に列せられる。やや難しかったが、興味深く読んだ。2018/12/15
富士さん
4
何度読み返しても魅力的な本。描かれる歴史というのはこの世界で起こった出来事という“地”の中にある“図”であり、そこには歴史という文脈によって取捨されたときに取り残された、無数の意味を付与されない出来事が転がっているのだと。丹念に出来事に当たれば、社会の主要勢力の文脈に無碍に従属させられることのない歴史というものを、事実をいうものを、見出すことができるのだと。そんな歴史への方法のようなものを本書を通じて初めて学ぶことができたのは、現在に至るまでワタシにとってとても貴重な糧になっているように思います。2015/07/22
uchi
3
キリスト教のことを詳しく勉強しないと、ジャンヌダルクも理解が難しいですね。2019/07/10
lily
3
フランスの戦乙女ジャンヌダルクの生涯を、当時の伝統や生活とリンクさせながら考察している。声を聞き、独特のカリスマ性をもつ彼女はフランスという国を代表する存在であることがうかがえる。2014/10/28