内容説明
対象aは黄金数である―ラカン晩年の言葉を手懸りに辿る、その生の軌跡と精神分析の本質。フロイト‐ラカン思想の根源に鮮やかに迫る。
目次
第1章 精神分析のロマネスク
第2章 前夜
第3章 ローマの隅石
第4章 言語という他者
第5章 他者になるということ
第6章 たった一人のパリ
第7章 アガルマを待ちながら
第8章 精神分析の語らい
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
harass
58
この思想家を少しはモノにしたいため手に取る。他の人のレビュにもあるが、黄金数うんぬんの数式と説明に唖然とし感動した。独特の思考方法に不慣れなための難解さがあるが実に面白い。先に斉藤環の本を読んでいたが役に立たない。この本の主な狙いが自己言及の不可能性についてのようで著者の主張が強い。『他人の中に埋め込まれ、私にとって非人間的で疎遠で、鏡に映りそうで映らず、それでいて確実に私の一部で、私が私を人間だと規定するに際して、私が根拠としてそこにしがみついているようなもの、これをラカンの用語で「対象a」と言う。』2016/11/09
Gotoran
50
『生き延びるためのラカン』(斎藤環箸)経由で。ラカンの生涯とともに、その思想が、フロイト以降の精神分析の流れを概観しつつ、所々でフロイトに立ち返り、解説・論考される。“対象aは黄金数である”という言葉に代表されるように、対象aを中心に、黄金数との関係を含めいくつかの数学的概念が象徴として導入される。難解な理論ではあったが、非常に興味深く、もっと知りたいという思い(探究心)に駆られた。 2014/11/02
ころこ
46
入門書は思想家の生涯、思想の体系、著者の解説、に大別できます。本書が読み辛いのは、このどれもが一緒くたになっていると感じるからでしょう。しかし、そのことは著者の失策ではない、というのが本書を読んだ感想です。「クラインの訳稿の紛失、セッションの時間の短縮、愛人シルヴィアの妊娠、大公妃の名の書き落とし、SPPを脱退してもIPAに留まれるという勘違い、こういった一連の失錯行為の積み重なりによって、ラカンはラカンとして生成した。そしてここから事後的に振り返るとき、それぞれの失錯行為が、みな一つの方向を向いていたと2019/08/18
燃えつきた棒
31
「待てど暮らせど来ぬ人を 宵待草のやるせなさ」 「来ぬ人」の名は、「理解」である。 「今宵は月も出ぬそうな」 ついに、闇夜にただ一人置いてきぼりを食らったという訳だ。 ラカンとの出会いは、今度もまたすれ違いに終わった。 まるでドラマ「君の名は」のようだ。 『狂気の何たるかを知ろうとする人には、精神分析はまさにお勧めの実践です。』(ラカン)2018/09/23
マウリツィウス
21
【ラカン精神分析入門】ユング心理学観点から論じられるのではなく古典方法論との参照を評価、引用と対応観点から追求、古代ユダヤ教フロイト観から現代思想との対応を熟慮した深層心理学の科学化、合意的に使用された旧約聖書引用とギリシャ文献との関連言及を比較検証していくとローマ古典が携えてきた引用価値を利用していく伝統意義、20世紀以降の大衆化知識を批判する方法論は未開拓分野としての現代論理学を吸収することで果たせなかった旧約文書と新約史料の展開を形成していく。意味と定義の交換を再評価し晦渋現代思想分類に含めない。2013/06/02