内容説明
蒙古襲来を機に高揚する、神国思想。各地で進む、寺社・荘園の再建、聖地回復の民衆運動と、排除された者たち。時代の変革願望がもたらした、後醍醐天皇の「新儀」とは。鎌倉末から南北朝へと続く、動乱の世紀を活写する。
目次
第1章 異国の要求
第2章 神国の誕生
第3章 悪党の烙印
第4章 徳政と伊勢神道
第5章 荘園社会の危機
第6章 後醍醐天皇の専制
終章 神国日本の行方
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
浅香山三郎
3
『楠木正成と悪党』に先立つこと四年前に出た本。教育学部の先生でもある著者は、話の運びがうまく、最後まで読ませる。 元冦から悪党を繋ぐ歴史の過程を、神領興行法とそれを支へるイデオロギーの浸透の結果として説明。その組み立てはなかなか明瞭である。 また、さういふ時代背景の中で、後醍醐天皇といふ人がだういふ存在として見られたかといふこと、あるいは、南北朝内乱(の齎した価値観の相対化)が、天皇の絶対性をも脅かす事態を招ひたことなど、その時代の大きな意義を語ることにも成功してゐる。2016/03/03
kanikakuni
1
南北朝時代にはわかりやすいヒーローがいないからドラマや小説では鬼門とされているらしいが、わたしにはかえってそこがおもしろい。 元寇などの変事が、くたびれはじめた旧体制をゆさぶり、「神国」という幻想が救済としてあらわれていく様子を、歴史学者らしくたんねんに描いている。それぞれの話はどれも興味深いが、よくまとまっているとは言いがたい。 つぎの一節を引いておこう。「中世の体制仏教は(略)、陰陽道や神祇信仰など、およそ土着の宗教的なものすべてを末端に組織していた」 日本は無宗教などではないとおもう。2014/03/01