内容説明
ユーラシアを覆う「イスラームの平和」が生み出した空前の大交易時代。オスマン帝国など強大な三帝国の下で、イスラームの繁栄は第二のピークを迎える。イスラームから世界史を読み直すシリーズ第二巻は拡大と成熟の時代を描く。
目次
1 モンゴルが「世界史」をひらく
2 東方イスラーム世界の成立
3 ティムールと後継者たち
4 イスラーム的世界帝国の登場
5 オスマン支配下のアラブ
6 ムガル帝国の繁栄
7 東南アジアのイスラーム化
8 国際交易ネットワーク
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kochi
21
イスラム世界へのモンゴルの侵入から、オスマン帝国の成立や、ティムール、ムガル帝国、そしてイスラム世界の東南アジアへの進出を述べて、モンゴルの影響はイスラム世界の停滞ではなく、拡大と成熟をもたらしたとのこと。やがてヨーロッパの資本主義が牙を剥く時代になるが、大航海時代そのものが、イスラムとは別の道を探す時代であり、ポルトガルは果たしてインド航路を発見したのか?と言う問いかけさえ為され、視点の違いは大きい。今までの常識が一気にひっくり帰ってしまうのは、一巻と同様。固有名詞がなかなか頭に入らないのも相変わらず。2023/03/06
崩紫サロメ
14
鈴木董編で、羽田正ら8名による共著。モンゴル帝国以降のイスラーム世界を停滞と衰退ではなく成熟と拡大の時代として捉え直す。第一章をモンゴル史の杉山正明が担当しており、破壊者として描かれてきたモンゴル帝国がイスラーム世界に与えたものを見直す。1993年刊行で、本書の説の方が現代の歴史学の主流になりつつあるが、オスマン帝国やサファヴィー朝だけでなく、東南アジア(中原道子)やオスマン帝国下のアラブ(加藤博)にも1章があてられており、充実した新書。2020/07/12
ああああ
6
プロローグから引き込まれる。なぜ中国に清浄寺といった名の寺があるのか、なぜインドネシアは多くのムスリム人口を抱えているのか…。国民国家に生きている自分としてはウマイヤ朝、アッバース朝といった国に目を向けてしまいがちだ。だけどトルコ・モンゴルの征服をきっかけとして生まれた東西の巨大な経済圏を、作り、担っていたのはムスリム商人たちだったからなのか。各章ごとに語り手も扱う国も変わるが、全体を通してなるほど国家の枠組みではない「パクス」を感じたので楽しめた。ムガル帝国・マラッカ王国の記述も簡潔ながらいいなあ。2015/07/06
富士さん
5
再読。中東・エジプト(アフリカ)のアラブ圏、アナトリア・地中海のオスマン圏、イランのシーア派圏、中央アジア・インド(東南アジア)の遊牧圏がおぼろげながら見えて来て、特にイランと中央アジア圏の記述を興味深く読みました。一つ一つの記述はいいのですが、これらを一つの本でまとめるにはもっと工夫が必要だったような気がします。便宜的にでも宗教史にするのか地域史にするのかくらいは決めてかからないと、単なる論集になってしまいます。個人的には、類書の少ないイラン、中央アジアでのイスラム史にもっと特化して欲しかったです。2020/08/30
oDaDa
5
アッバース朝が滅亡し、イスラーム世界の精神的主柱であったカリフが廃位され、モンゴルが乱入した後、イスラームの繁栄は第二のピークを迎える。オスマン帝国、サファヴィー朝、ムガル帝国の三帝国が鼎立するパクス・イスラミカの時代である。この本が刊行された当時(1993)、おそらく西洋史中心主義を脱しようと意図して書かれたものだろうけど、逆にイスラーム擁護に熱心過ぎるようにも感じた。過食気味のイランはともかくとして、オスマン帝国の章は非常に読みやすかった。なんだかんだで歴代スルタン名覚えるの結構難儀なんだわ。2014/01/05