内容説明
言葉を、狂気を、監獄を語る遠見の思想家フーコーの視線はどこに向けられたのか―資料集成の奥、思考不能の空間へ。多様な言説の分析を通し、遠望される非在の場。主体のない饒舌と沈黙が交差する深部をフォーカシングして見せる「陽気なポジティヴィズム」に迫る。
目次
序章 知識人の肖像
第1章 フーコーの望遠鏡
第2章 変貌するエピステーメー(16世紀、ルネサンス;侍女たちのいる空間;「人間」の登場へ)
第3章 外の思考(私は構造主義者ではない;外の思考;これはパイプではない)
第4章 権力と主体の問題(言説の分析;主体化の装置;主体の問題)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
17
フーコーの入門書もこれで四冊読んだ計算になる。読めば読むほどわからなくなるのに惹かれるのはなぜだろう。フランス語を勉強したくなってしまう。英語さえおぼつかないのに・・・。2012/08/18
nobody
14
これまで読んだ中で最悪の本である。専門書ならいざ知らず、新書でこれは絶対にあり得ない。講談社現代新書の責任であり信用問題だ。フーコー本は3冊目だがまともな日本語で書かれたのはポール・ストラザーンの本だけだ。フーコー本は訳が判らぬように書かねばならぬという掟でもあるのか。筆者が判らぬから判るように書けない。判らぬのを糊塗するために晦渋な表現で誤魔化す。朝日・岩波文化に毒されありがたやとそれを受け入れ批判しない。入門者にジャーゴンの壁で門を閉ざさせるのが学者の本能で、学者の腐りようを知るには好個の1冊である。2019/07/27
寛生
14
内田氏の立場なのか、それとも、フーコー自身がいうところの立場なのか、その境界線がよくわからなかった。とくに、本書の終わり方に疑問をもった。最初のほうはよかったと思うが。2013/07/04
beside image
6
この本は、入門書ではなく、どちらかといえば解説書であるので、「フーコーについて全く知らない」、あるいは「フーコーの著作を読んだことがない」人にとっては、なかなかきついところもあるかもしれない。まずは、他の入門書を読むか、例えば『言葉と物』など、実際にフーコーを読み進めていって、何となく雰囲気がつかめてきたところで、その読解の確認をし直すために読むべきもの。後半はさすがにバテてくるが、いずれにしても、フーコーの膨大な研究を〈主体〉をめぐる観点から考察をすすめ、いくつかの筋を通した読み方を促している。2013/12/06
yuki
4
ミシェルフーコーの入門書。彼の思想の全般的な内容が、豊富で平明に語られている。序章にもあるように、フーコーは「自己同一性」を徹底的に破壊せんとした人物であった。如何なる社会も、それぞれの人間に対して、ある規格を与え、それに適合しない人を排除するような契機を有している。そうした中で、排除された人は、物理的・言語的な空間に閉じ込められる。フーコーは、恐らく人間はそもそも如何なる規格も受け付けない、無限に多様な生成流転しゆく存在であると考えていたのではないか。彼が、最終的にギリシアの"徳"に向かったのは必然か。2021/04/04