内容説明
《自己愛》の心理は誰のこころにも潜んでいる。自己を生かす創造の活力源となる健全なナルシズム、狂気と破滅をもたらす歪められた未熟なナルシズム、過剰な自己顕示、性的倒錯、妄想型神経症など、多くの症例を通して、正常と異常を分かつ、こころの不思議にメスを入れる。
目次
1 あなたはナルシストか
2 モナ・リザの“謎の微笑”(レオナルドは何を描いたか;ナルシズムと同性愛)
3 シュレーバー博士の奇怪な幻想(「シュレーバー症例」の考察;ナルシスト岸田劉生)
4 トーマス・マンと三島由紀夫
5 ヒトラーにみるナルシズムの病理
6 なぜナルシストになるのか(ハインツ・コフートの生涯;精神分析的人間観)
7 ナルシズムの病理と現代社会
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
swshght
7
ナルシズムには二種類ある。「健全なナルシズム」と「未熟なナルシズム」だ。前者は進歩や創造の活力となるが、後者は過剰な自己顕示や妄想、性的倒錯を生む。恐らく、ニーチェが『悲劇の誕生』で述べた「アポロ的」と「ディオニュソス的」は、この点に大きく関わっている。中西によれば、現代ではナルシズム文化が社会に浸透しているという。それを助長する要因として、マスメディアの発達が考えられる。マスメディアによって、「知名度」が社会における一つの尺度となり、スターの「パフォーマンス」に対する大衆の「崇拝=同一化」が顕著となる。2013/07/04
床ずれ
1
コフートの理論による、ナルシズムの形成過程はよくわかった。今度は逆に、自分のことを好きになれない人間とその親との関係についても知りたくなった。2016/11/24
小林ミノリ
1
フロイトが分析したダヴィンチの症例を軸に、創造的行為の源たる健全なナルシズム、破滅に至る衝動でもある未熟なナルシズムを摘出し、天才と狂気の心理的ゆらぎを明確に記述します、この厄介な人間心理を制御するヒントとして。
かとー
1
健全なナルシシズムと病的なナルシシズム。自己愛をよりよい形で昇華できれば当人の潜在的能力を引き出す事も可能になってくる。本の事例にもあるように、天才と狂気は紙一重2011/08/06
ぺた
0
前半に著名人の例、後半にフロイトの理論とコフートの理論が対比してあります。メモ→鏡映転移(誇大自己)、理想化転移(理想化された親のイメージ)、分身転移、変容性内在化(自己対象)、共感的対応。2014/03/23