感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
南北
13
ダーウィンの進化論にある自然淘汰説を批判して、棲み分け理論を提唱した本です。われわれの世界はデタラメなものではなく、一定の構造と秩序を有し、一定の機能を発揮しているという世界観から出発して議論を進めていきます。論じている内容の性質上、具体的な例を挙げることが少ないので、内容を把握するのが難しいのですが、最後の「歴史について」のところから棲み分け理論が語られていますので、そこまで読み進めると面白くなってきます。生物が環境に影響を与えているという見解は興味深く感じました。いずれ再読したいと思います。2019/03/07
Z
8
著者の視点は、ある支配階級が没落しても、別の支配階級がそのポジションをしめ、全体の構造は変わらないというシビアなもの。生物は固有の環境をいき、それとの相互作用で生きてるという視点は今や目新しく感じないが、それだけ一般化したということでしょうか?オートポイエーシスなどをかじったほうが、深みあるかなぁというのが正直な感想。2016/01/02
キニマ
6
筆者、今西錦司自身の自画像として後世に残した著書。内容は難解で再読してみたい。生物は相違点を有するが同時に相似点も有する。細胞の一つが二つに増殖するように人間も元一つのものから生成発展したことからあらゆる生物、または無生物もがみな類縁関係を有している。と同時に生物の存在と環境の存在はどちらも同発的にかつ両者とも依存する関係がある。それはダーウィンの進化論にあるように環境の変化が生物の形態や習性を形成したという一方的な解釈ではなく、生物が環境を求め環境を認識するといった生物を主体とした解釈もうかがえる。2017/08/16
Koki Miyachi
6
動物学者今西錦司の名著。読みはしたものの、生物と自然の思索に圧倒された。ヒラタカゲロウのフィールドワークは、本物の動物学者の執念と求道の世界。ここまでやらなければ一流とは言えないのだろう。並大抵のプロではない孤高の存在。2013/06/16
aki
6
ふむ、生物学の本というより、哲学の本ですな。晩年の作品に比べると、やや難解。「この世界を構成しているいろいろなものが、お互いに何らかの関係で結ばれているのでなければならない」といったあたりは仏教で説く縁起説や依正不二(生物と環境が二にして不二であるとする)的な世界観と似ているものを感じた。西田幾多郞や三木清にも似ている気もするが、三人とも京大出身だから、当然といえば当然か。2012/11/11