出版社内容情報
【内容紹介】
良心的で小心な医学部の助手が、何故、生体解剖というショッキングな事件の現場に立ち会うことになったのか?彼の置かれた条件と過去を照らし、人間の意志、良心を押し流す運命を描く――。日本人にとって神とは何か、罪とは何かを根源的に追究した問題長編。毎日出版文化賞・新潮賞受賞。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まる
21
米兵捕虜を生体解剖した医師や看護師の話。実際に起きた事件を元にしていたのか…時代の流れの恐ろしさを感じました。解剖実験後の勝呂先生の今をもっと知りたかった。2014/07/16
松島 百景
8
1ページ目から埃が立ち息苦しい。読み進める度、心に重い何かが積み重なる。本当に、ヒーリングミュージックを聞きながらでないと中盤は乗り切れなかった。だけど文字を追わざるを得ない。読み終えないわけにはいかなかった。2014/11/05
美甘子
7
10年越しで読んだ作品!この人の言葉の選び方や情景の切り取り方が好きだと思った。2015/05/02
アン
7
戦争が人を狂気に駆り立てていくのか?戦争がなくても全ての人の中に狂気は潜んでいるのか?戸田が子どもの頃からの感情を振り返るとき、狂気との境界線は意外に近くて、私の心にも潜んでいるのかと思わず自分の心を探りました。勝呂のような良心を持った人間も、目の前の狂気にのみ込まれていく様が、暗く重い波音によって引き立てられています。2014/08/05
まさ
7
「何が正しいか」というのは時代によって変わります。そして、「戦争」というのは本当にたくさんのものを奪うんだなぁというのを感じました。 今は「人の命を奪うことは罪」ですが、戦時中だと「英雄」。「医学のため」という免罪符を掲げて生体解剖を行ったのは「出世のため」だったのか、「戦時中」という特殊な状況だったから起こったのか。難しいです。2014/04/13