内容説明
エリーザは二十歳をわずかにすぎたばかり。顔には汚れがこびりつき、美しいのか醜いのか、容貌すらみわけることができない。曖昧な輪郭からは、娘らしい微笑みの表情も想像できない。治療不能の烙印を押され、誰にも説明できない苦しみに引き裂かれた娘。僕が医学部で学んだのは、カルテは疑ってかかれということだった。
著者等紹介
バッティアート,ジャコモ[バッティアート,ジャコモ][Battiato,Giacomo]
ヴェローナ生まれ。出版社の編集者、テレビ番組のプロデューサーを経て現在は映画監督、脚本家、小説家。’96年発表した初の小説『Fuori dal cielo』で同年ドメニコ・レア賞、トリノ処女小説賞受賞。監督作品には“Blood ties”(1985、ヴェネツィア映画祭TV映画賞受賞)、“Diary of a rapist”(1995、ベルリン、モントリオール、ストックホルム各映画祭招待作品)等、多数
荒瀬ゆみこ[アラセユミコ]
大阪外国語大学イタリア語学科卒。シエナ外国人大学、フィレンツェ大学外国人文化センターへ留学後、雑誌編集者を経て、ファッション誌の特派記者として5年間ミラノに駐在。現在、書籍編集者、翻訳者
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感想・レビュー
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くすこ
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主人公の行動そのものは決して褒められたものではないし、えええ、これでオチ?てな状態でフィニッシュ。なのに読後感は美しく希望に満ちていた。己の欠落を埋めるものが物語であるというのには納得。2011/01/31
ムーセス
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原題『L'AMORE NEL PALMO DELLA MANO』は翻訳サイトで訳すと『愛の手のひらの上で』でした。なるほど。 戦争の話が出てくるとは予想していなかったので面食らった。ラストの物語は悲しく、読後感がよいとは感じないなぁ。脇役に魅力を感じる。『幸福な日を自ら捨ててはいけません』の一連の夫人のセリフが残っている。語り手である主人公が絶対的に正しいと言えないし、共感もあまりできなかった。病の捉え方はすてきだった。2011/01/24
こえん
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閉鎖病棟にいるエリーザへの治療に疑問を抱き病院から連れ去った、医師のアレッサンドロの行動力がすごい。一旦それまでの世界が、嘘が明るみに出て崩壊した後は、どんな無惨な事実でも知らされないよりは知る方がいいこともあるのね。2009/03/24