出版社内容情報
この世は完全犯罪だらけ。誰にも気付かれなければ、それは完全犯罪なんです・・・。
一篇読み終わるごとに繰り返される驚愕、そして震撼! 一人の作家から、これだけ多彩な作品が生み出されるものなのか──。
内容説明
心の中に生まれた鬼が、私を追いかけてくる。―もう絶対に逃げ切れないところまで。一篇ごとに繰り返される驚愕、そして震撼。ミステリと文芸の壁を軽々と越えた期待の俊英・道尾秀介、初の短篇集にして最高傑作。
著者等紹介
道尾秀介[ミチオシュウスケ]
1975年東京生まれ。2004年「背の眼」で第5回ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞し、同作でデビュー。2005年『向日葵の咲かない夏』で注目を集める。2007年『シャドウ』で第7回本格ミステリ大賞を受賞。デビューからわずか4年ながら、ミステリー・ホラー・文芸など、ジャンルの壁を打ち破る大躍進を続け、いま最も注目される作家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
takaC
194
六編ともゾッとする話だった。文字フォントは態とこれにしてあるのでしょうか?「た」が読みにくかった。"S"と"鴉"がキーワードみたいだったけれど、一編目の『鈴虫』には鴉は登場していましたか?2012/02/10
風眠
171
人の悪意や狂気といった、外側からは見えにくい闇の部分を描き出した短編集。格調高い雰囲気の文章と、どの話にも登場する人物S(すべて別人)、そして、静かに忍び寄る鴉がたたずむさまは、黒い点がだんだんとひろがり、漆黒の闇に辺りを染め上げていくようだ。狂気という鬼に囚われてしまった人間は、もう後戻りのできない一線を越える。鬼の跫音に誘われ踏み込んでしまった世界には、そんな哀しい人間が棲んでいる。道尾氏の作品を読むのはこれが初めてだけれど、短編とは思えない完成度の高さに心奪われた。2013/03/14
おしゃべりメガネ
154
個人的には非常に‘コワい’と感じた作品でした。ジリジリと「何かある、何か起きる」とビビりながら読んでいて、「アレっ?意外と・・・」なんて油断してたら、ちゃぶ台ひっくり返すくらいの勢いでやってくれます。笑いのツボもそうですが、恐怖のツボやレベルも人それぞれだと思いますので、今作にホラー100%を求めるのもなんとも言えないですし、かといって今作までの道尾ワールドを求めて読むのも、もっとなじまないと思われます。単純に「道尾さんはこういう作品(作風)も書けるんだ」というトコを楽しめればいいのではないでしょうか。2009/11/07
ミナコ@灯れ松明の火
149
誰にでも心の中に鬼がいる。鬼の跫音を聞いたことのない人なんてたぶんいないと思う。何重にも蓋をして隠しておきたい心の底のまた底にある深い井戸を無理矢理覗かされた気分。時には拾い上げてくれる優しい手を、時には井戸に沈んでいくような重力感を感じながら読んだ。人が鬼に屈する瞬間の、とてつもない孤独と悲しみが胸を突き刺す良作でした。2010/11/01
がらは℃
148
なんとも怖い物語ばかり。Sの存在が、向日葵の〜を連想させた。物語のベクトル的には同じかなあ。人が狂気に迷い込むのトリガーは、ほんの些細な事象。そして鬼が近づいてくることはわかっていても、気づかない様をしてしまう。それが人なのかなあ。2010/10/11