出版社内容情報
こんなにも痛い。こんなにも、愛しい。
川本麻由はかつての恋人によるDVで心に傷を負い、生きることに臆病になっていた。ある日通院先で植村蛍に出会い、次第に惹かれてゆくが・・・・・・どこまでも不器用で痛く、眼が眩むほどスイートな恋愛小説!
内容説明
DV、刻まれた怯え、求める心と拒む身体―痛みを超えて、もういちどわたしたちは、恋をする。
著者等紹介
島本理生[シマモトリオ]
1983年東京生まれ。98年「ヨル」で「鳩よ!」掌編小説コンクール当選、年間MVPを受賞。2003年都立高校在学中に『リトル・バイ・リトル』が芥川賞候補となり、同年野間文芸新人賞を史上最年少で受賞。『生まれる森』(04年)『大きな熊が来る前に、おやすみ。』(07年)も芥川賞候補となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おしゃべりメガネ
213
ピュアな恋愛なのは間違いありませんが、かなり奥が深い作品です。過去に熾烈なDVで苦しめられ、ココロに深いキズを負った女性が、同じように少しココロに影がある男性と出会い、色々と悩みながらも少しづつ距離を縮め、惹かれあっていく物語です。決して偏見とかではありませんが、主人公「麻由」のような境遇の方は本当に大変なんだろうなぁと。そんな彼女が唯一自然と接するコトができる従兄弟の「さとる」君は本当に素晴らしいキャラでした。オトコたるもの、こういう風に振る舞い、生きていけたらさぞかし「ナイスガイ」なんだろうなぁと。2016/09/08
mariya926
125
麻由はかつての恋人の暴力で引きこもり状態になっています。カウンセリングの相談所で会った蛍に声をかけられ付き合うようになりますが、体が距離反応を起こし距離を縮めることが出来ません。蛍がもう少しプラトニックなタイプだったらいいのに…。何気に手が早い気がします…。確かにお互いに精神的に苦しい部分があると理解し合えますが、大きな問題にぶつかると脆いかもしれないと思います。ハラハラしながら読んでいましたが、恋愛の初期の頃のドキドキとそこから派生する苦しみを感じました。読友さんにお勧め頂きましたが読めて良かったです。2019/06/14
おくちゃん🌸柳緑花紅
103
ヒリヒリした。人は弱い、でも人と出逢い関わるなかで自分を知ることができる。「誰にも知られたくなかったし、相談できなかったのも事実で、だけど本当はずっと、誰にも理解されない可哀想な自分でいたかったんだと、思う」そんな風に言えたなら、言えたんだから、歩んでいけるね。誰もが何らかの痛みを抱えて生きている。2015/12/23
ベイマックス
102
文章的には小難しくした言い回しもなくすいすい読めるのだけど、内容は深刻。性的な児童虐待被害の心に負う闇。DVによる男性恐怖。かたや男の方は、いじめによる後遺症的なパニック障害。新たな出会いの人を信じたい・好きという感情・触れ合いたいという衝動に対する恐怖。苦しむ感情がうまく表現されていて、苦しいほど。2021/06/10
misa*
82
すごく壊れやすくて繊細なお話だと思った。私的にはナラタージュの方が好きだけど、主人公が抱いた、こんなにも好きで触れたくて傍にいたいのに、過去のトラウマが邪魔をしてしまうもどかしさが、なんとも言えない気持ちにさせられる。本当に島本さんが描く男性って優しくて大きく包んでくれる包容力があるのに、少しの傷が見える…そこを上手に描かれるなーと、つくづく感じた。しかし、この一冊もまた切ないなぁ。2016/05/17