内容説明
森本隼子、14歳。地方の小さな町で、彼に出逢った。ただ、出逢っただけだった。雨の日の、小さな事件が起きるまでは。苦しかった。切なかった。ほんとうに、ほんとうに、愛していた―。姫野カオルコの新境地、渾身の思いを込めて恋の極みを描ききった長編小説。
著者等紹介
姫野カオルコ[ヒメノカオルコ]
1958年滋賀県生れ。幼少の一時期をキリスト教宣教師宅で過ごした。青山学院大学文学部在学中にいくつかの雑誌でリライトやコラムを受け持っていたが、卒業後、画廊事務を経て、90年、出版社に直接持ち込んだ小説『ひと呼んでミツコ』がその場で採用され、単行本デビュー。以降、作品のテーマごとに文体を自在に操る筆力をもとに、『ドールハウス』『喪失記』『レンタル(不倫)』の処女三部作、『変奏曲』『整形美女』『よるねこ』『特急こだま東海道線を走る』など、ジャンルを超えた作品を次々に発表。作風は多様ながらも、生きることの哀しみと滑稽さを、つねに清明な視点で描きつづけ、多くの読者を獲得している。97年、アッシジの聖フランチェスコの生涯に想を得た『受難』が第117回直木賞候補となった
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感想・レビュー
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クリママ
46
小学2年から中学2年まで、隼子を中心としたその年代特有の異性への関心を描いた群像劇。すべてにその通りとはいえないものの、その頃の気持ちを思い出させてくれるところも多々ある。視点が次々に代わり、作者の思うところも入ってくる。独特の文章でもあり、若干の読みにくさはある。終盤の数年後の状況はそんな作者らしさがなく、ちょっと斜め読み。でも、その中で、妻が死に夫が後追い自殺をするくだりは田辺聖子「ひなげしの家」を思い出し、感慨にふける。最後まで読んで、あ、やっぱり泣きたいほどの恋愛小説だったんだと思う。2017/01/23
橘
43
面白かったです。始めの小学生時代の描写には参って、女子ってめんどくさい…と読むのを辞めようかと思いましたが、諦めないで良かったです。中学時代、隼子が恋愛に陥っていく様に圧倒されました。すごい熱量でした。墜落、というタイトルはぴったりです。恋愛って陥って、どっと流されていくものだな、と改めて思いました。残酷な展開でしたが、ラストシーンで救われました。良かったです。2017/03/30
あつひめ
38
小さな頃から、男であり女でもあるのよね。誰が教えたわけでもないのに人を好きになることを覚えている。大人の恋も子供の恋も苦しいのは一緒。ツイラク・・・恋がジェットコースターでグワ~ッと急降下したりするのがゾクゾクしたり気持ち良かったりするのと同じだからかな?だから・・・ツイラク?どこまでも落ちていく。二人を取り囲むたくさんの人。田舎ならではの環境。誰も二人をほっといてはくれない。もしも誰も気にせずにいたら何かが違ったかもしれない。同じ時間を過ごした仲間たちも自分の道を歩きながら心は時々過去を歩いてるのかな。2011/05/26
梅干を食べながら散歩をするのが好き「寝物語」
33
▼小学低学年から30代半ばに至るまでの人生、純愛を描く物語。長い。そして登場人物が多く少しウンザリしかけた。しかし若い男性教師と主人公の少女の出会いから俄然物語が面白くなる。▼教師と生徒の性交を伴う恋愛。これは今なら猥褻案件だ。でも昭和の時代には現実にこういうことがあったのかも…。▼姫野氏の作品はエッセイだけ読んだことがあった。そして今回、遅ればせながらこの作品を読み、作家としての本当の姿を見た気がした。毒のあるストーリーに驚いた。 ▼ハッピーエンドと理解して良いのだろう。安心して読んで欲しい。2022/06/27
らむり
31
中盤までの小中学生時代はどろどろ濃密、終盤の大人の場面はわりとあっさり。納得の恋愛・性愛・人間模様物語。2013/02/17