内容説明
1966年。街にビートルズの曲が流れるその年の夏、ぼくは一台のオンボロ外車を手に入れた。シムカ1000。風変りな色に塗られたその車に魅せられたぼくは、女ともだち揺子の意外な成功と突然の転落のドラマを乾いた心で見つめていた。「車は雨の日にこそみがくんだわ」最後に揺子が残した言葉を忘れられずに、その夏からぼくの恋と車の奇妙な遍歴の季節がはじまる。ビートルズ、〈男と女〉のアヌーク・エーメ。ぼくは作家を夢みる青年だった。ぼくの愛した9台の車と9人の女たち。
目次
たそがれ色のシムカ
アルファ・ロメオの月
アマゾンにもう一度
バイエルンからきた貴婦人
翼よ!あれがパリの灯だ
ビッグ・キャットはしなやかに
怪物グロッサーの孫娘
時をパスするもの
白樺のエンブレム
エピローグ 風のあとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
山猫
11
このへそ曲がりながら真実を突いている、アフォリズム精神に溢れたタイトルよ。20歳頃にほとんど誰もが体験する「クルマ」という名の熱病と、それに稀にくっついてくるいい女が、どんな男を作るのか、イマドキの草食系プリウス小僧にはわかるまい。1988/08/01
ルナ
1
何かを得ることは何かを失うこととセットである。それはよくいわれていることだけど、この小説を読み終えるとそんな寂しい気持ちがスッと染み込んできた。文章はべらぼうにうまい。思わず写経してしまった。 2019/11/26
ポコちゃん
0
大昔に読んだ本を図書館で見かけ、懐かしく読む。 田舎には外車なんて走っていなかったから、この本でベンツやBMW以外の車を知った。あの頃はスマホで検索なんてできなかったから、こんな感じの車かなぁ、と想像しながら。 作者の五木寛之さんの車に対する愛が感じられる。それぞれの車にふさわしい物語(と女性)があって、おもしろい。2022/05/03