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内容説明
大きな黒い霊柩車のような不審な車。かつてこの車を見た翌日、隣の家族は忽然と姿を消した。その同じ黒い車が、密かに想いを抱く浅井安奈の家の前に停まっている。安奈はあまり幸福とは言えない学校生活を送っている可憐な少女で、趣味を通して最近少しだけ仲良くなってきたところだった。膨れあがる不安感に押され家の中に忍びこんだ多代亮介は、傷ついた安奈を連れ出して逃亡した。蒼衣が深い傷を抱えた一週間後。処分しそこなった“泡禍”被害者を探すため、瀧修司と可南子の工房を訪れた蒼衣たち。だが、可南子に対して雪乃は恐怖を感じずにはいられない。雪乃は“生き返り”という概念に疑問が隠せず、そして―。悪夢の幻想新奇譚、第十二幕。
著者等紹介
甲田学人[コウダガクト]
1977年、岡山生まれ。津山市出身。二松学舎大学卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
47
人魚姫編がグロテスクなら、しあわせの王子編はスプラッタとして双璧を為すと思いました。改めて「しあわせの王子」を読むと王子の身勝手さに気づきますね。彼の心が砕けたのは一番、自分を愛してくれた燕に残酷なことをしてしまった事に漸く、気づいたからだろうか。亮介が安奈の心臓と頭部を持って逃亡する時に「正気になった」という記述にゾワっとした。しかもその根底にあるのは「自分は他の男達と違って彼女の心と生き様を愛したからこそ、どんな姿になっても愛する事ができる」という一種の驕りがあるのがまた…。2021/07/22
まりも
41
今回の題材はしあわせな王子。葬儀屋の断章によって蘇った浅井安奈と逃亡する亮介に焦点が絞られている訳ですが、死体から蘇る安奈を必死に匿う亮介の姿はどう考えてもマトモじゃない。普通の人が泡禍に関わる事で少しずつ狂人になっていく姿には恐怖を感じました。心臓を拾って逃げるとかヤバすぎるわ。配役だけでなく、蒼衣に起きた異変や加奈子から漂う不安定さと気になる事は多いので次巻も楽しみ。上巻はグロ控えめだったので下巻はヤバいだろうなぁ。2015/02/01
坂城 弥生
33
この状況で悪夢は始まったばかりなの…??この後どうなるのか怖い…2022/05/31
Yobata
30
蘇らせた死体を逃すというミスをした葬儀屋の依頼を受けて修司達のもとに向かう蒼衣と雪乃。そこで死んだ筈の可南子と再び出会い、蘇りの真実を聞く。断章持ちとしては尊敬するも蘇った人の末路を見たことのある雪乃は警戒を許さない。そして肝心の逃げ出した死体は逃げたのではなく何者かが連れ出していて…。今回はオスカー・ワイルド作の「幸せな王子」がテーマ。社会風刺めいた象徴が多いこの童話の中で再び“再生”と向き合うことに。今回の依頼は葬儀屋ということで可南子の秘密がついに明かされる。なるほど、だからこれほどまでに達観して→2014/07/03
半熟タマゴ
25
今回の童話はしあわせな王子。葬儀屋の断章の力で蘇った浅井安奈と彼女が人ではなくなったと知った上で一緒に逃亡する多代亮介の話がメインだったので、しあわせの王子のそれぞれの役割が明かされることなく上巻は終了。浅井家を襲った泡禍との繋がりもあったりするのかな。下巻ではどんな恐ろしい展開が待っているのだろう。2015/01/17