私自身の見えない徴

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  • サイズ B6判/ページ数 318p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784047915152
  • NDC分類 933
  • Cコード C0097

内容説明

10歳の誕生日、父が原因不明の病気になり、モナは「止めること」をはじめた。大好きなピアノも、得意だった陸上も、デザートも映画も、卵入りサラダも何もかも。止められなかったのは、木をノックすること、それから数学。リズミカルにノックしながら、無限に数える。それがモナの愛。モナの全て。20歳を迎えたモナは、ある町の小学校で逃げ出した先生の代わりに算数を教えはじめる。理解不能、個性ばらばら、手に負えない子供たち。閉じていたモナの宇宙が、否応なしに開かれてゆく。短編集『燃えるスカートの少女』で比類なく美しく切ない世界を描き出したエイミー・ベンダー。より深く、より鮮やかに物語を紡ぐ、待望の初長編。

著者等紹介

ベンダー,エイミー[ベンダー,エイミー][Bender,Aimee]
1969年、3人姉妹の末っ子として生まれる。カリフォルニア大学アーヴァイン校創作科出身。小学校教諭をつとめた後、「Granta」「GQ」「The Antioch Review」などの雑誌にショート・ストーリーを発表。最初の短編集『燃えるスカートの少女』は刊行されるや書評家たちの絶賛を受け、98年のニューヨーク・タイムズ紙の注目の一冊に選ばれる。不可思議で切ない独特のベンダー・ワールドは、世界中で読者の心をつかんだ。初の長編となる『私自身の見えない徴』は2000年に発表。ロス・アンジェルス・タイムズ紙の注目の一冊に選ばれるとともに、ベストセラーリストにも登場、確実にファンを広げる。2005年夏、待望の短編集第2弾『Willful Creatures』を刊行。ロス・アンジェルス在住

管啓次郎[スガケイジロウ]
1958年生れ。翻訳者、エッセイスト。明治大学理工学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

しゅん

15
エイミー・ベンダーは食べること・数字・セックスといったモチーフを、喚起力の強いイメージを駆使して書きあげる。こうした特徴が誰かに似ていると思ったら春樹なんだよな。実際、彼女は影響を受けた作品に『ねじまき鳥クロニクル』を挙げている。今作は数字を中心に据えており、首から数をぶら下げた隣人とか「数と物」の授業とか、まさに抽象的なもののイメージ化が前面に押し出されている。こうした情景を目に浮かべた時の楽しさが、執拗に描かれる少女の心の痛みと相俟った時に、この作家ならではの詩情のようなものが浮かび上がるのだろう。2017/05/28

(C17H26O4)

7
感受性が強く繊細なモナの孤独さに、苦しくてところどころ泣きそうになった。モナは自分の感情を見せるのも理解されるのも怖く、様々なことを自ら止めてしまう。でもそんな彼女の感情のコップの水は溢れる寸前で、決壊を食い止めるために木をノックする。事情を抱える(こちらも繊細な)教え子の起こしたことが引き金となりとうとう水は溢れてしまった。溢れた感情が言葉になったとき、モナは救われ、また教え子も救うことになったのだと思う。『癒す人』『燃えるスカートの少女』の主人公と共通の孤独さや痛みに、押しつぶされそうになり放心した。2017/10/09

二藍

7
父親が床に伏せるようにようになって、「やめること」をはじめたモナ。それでもやめられなかったのが、木をノックすることと数学。20歳になったモナは、小学校の混沌とした教室に数学教師として放りこまれる……。どこか浮世ばなれしたヒロイン、抽象的な、寓話や詩のような文章、わたしにはなんとなくつかみどころがなくて、読むのがたいへんだった。だけど父親のおとぎ話をあざやかにひらいてみせたラストはほんとうにすがすがしくて、胸がすっとした。2017/02/26

fig

5
この小説が好きだ。ふらふらと漂うような彼女の思考に同調できるわけでも、気持ちを推し量れるわけでもないけれど、きっとこんな物語もある。好きだとか愛だとか形に嵌めてしまわなくても、この中には色々な愛情が潜み、漂い、自身の姿にすら戸惑っているのだと思う。人は脆く、弱く、しかし優しくて愛しい存在で在れるのだ。2010/04/27

まゆぼー

4
毎度のことながら、自分でもどうかと思うほど没頭してしまった。理科の先生との恋愛も我がことのようにひりひりした。ロマンスとかいつもあまり興味ないのに。エイミー・ベンダー、なぜこんなに私の心をかき乱すのだろう……。2017/12/08

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