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角川oneテーマ21
物語消滅論―キャラクター化する「私」、イデオロギー化する「物語」

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  • サイズ 新書判/ページ数 232p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784047041790
  • NDC分類 914.6
  • Cコード C0295

内容説明

テロとの戦い、ファンタジーの世界的ブーム、ネットでの中傷による殺人事件…。いまや社会において人々を動かしているのは「物語」である。80年代後半にイデオロギーによる社会設計が有効性を失い、複雑化する世界を見通すことが出来なくなった時、人々は説明の原理を「物語」の因果律に求めた。それは善と悪、敵対者、援助者など単純化された要素により成り立つ因果律である。それは分かり易さ故に人々を動員し政治をも動かし始めた。イデオロギーが「物語」に取って代わられた時代、世界はどこへ向かうのか?そのリスクはいかなるものなのか?「物語」が「私」と「国家」を動員し始めている。

目次

第1章 創作する読者と物語るコンピュータ(「物語」がイデオロギーを代行する時代とは;記号的価値としての「物語」 ほか)
第2章 キャラクターとしての「私」(都市伝説と集合的な作者;「現実」は明治三十年代に作られた ほか)
第3章 イデオロギー化する「物語」(新化論的な因果律の消滅した世界;「キャラを立てたい」日本 ほか)
あとがき なぜ、ぼくは「近代的言説」を「擁護」しようとするのか

著者等紹介

大塚英志[オオツカエイジ]
まんが原作者、小説家、評論家、編集者。1958年生まれ。筑波大学人文学類卒業。日本民俗学専攻。まんが誌フリー編集者を経て、その後は、まんが原作者やジュニアノベルズ作家、評論家として活躍。『“まんが”の構造』『少女民俗学』などサブカルチャーとおたく文化の視野からの評論・社会時評が注目され、『多重人格探偵サイコ』『木島日記』の原作でも脚光を浴びる
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

白義

18
凡庸で説話論的な物語に現実世界が駆動される現在に対し、いわゆる「近代文学」的な自我の歴史を辿りながら、改めてそれを立ち上げようと言う話。いつもの大塚物語論の分かりやすいまとめで、彼の立場や史観は本書で大筋わかる。物語消費の時代から、その先にある自動的に物語が生成され現実を構造化し、飲み込む時代、という認識のようだ。そこから導き出される物語環境の分析が「ゲーリア」までの東浩紀の認識とかなり一致しているように見えるのは意図的なものか。多元宇宙SFの隆盛辺りはそんな感じ2013/07/15

たばかる

10
2004著。社会変化を元にした文芸評論。所謂小説を、与えられた物語の枠組みの中で大衆的な消費をさせることで現実を説話論的に管理する試みが‘80に行われることによって、作者の固有性が揺らいだ、というのが本作の根幹となる。これが作中の歴史を無視した二次創作、小説作成ソフトの開発などにも結びつく。気になったのは舞城を代表とする新本格批判で、その名前を一見古典的な名前にしたことで近代小説的な「私」の有無を曖昧にしたという見方だった。最後に社会のオブザーバーとして、物語性を持つ文学は必要だと主張して筆を置いている。2019/04/25

三柴ゆよし

8
民俗学なんて浮世離れした(実際はそうでもないが、まあ感触として)学問を齧っていると、いったい自分の学究というものが、なんらかのかたちで社会とコミット出来るんだろうか? という疑問を感じることが間々ある。本書を読んで一番感心したのはそのあたり。これからは「文芸時評」こそが「物語化する社会」を批判・抑止していかねばならない、というのが本書の大きな主張のひとつだが、むしろ民俗学こそ、そうした問題に積極的に関わるべきではないのか。大塚の民俗学不審てのは、相当なんだろうけど、ちょっと淋しかったりもする。2009/11/08

5
現実世界までも説話的物語軸を用いて解説しているところが非常におもしろい。文中で非常に皮肉な言い方をしているが、中々見出せない「文学がなんのためになるの?」という問いに答えを出しているところは素直に関心する。2009/04/23

山中タカ

4
マルクス主義の終焉に伴いわれわれの世界認識の方法として再度浮上してきた説話論的イデオロギー。その可能性とリスクについて近代擁護の立場から分析している。物語論はシステマティックなものであるだけに社会的・政治的に利用されることは不可避である。小説家も文芸批評家もそのことに自覚的であるべきという考えは非常に納得できる。2017/11/26

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