内容説明
アメリカがアメリカと「なってゆく」過程を知らずして、今日の実像を理解することはできない―。苦難の連続の建国前夜から陰謀論・反知性主義が渦巻く現代の混沌まで、彼の国を一貫して突き動かし、その寄る辺となってきた理念とは、まさしくキリスト教そのものであった。自由・寛容・狂信・傲慢…相反する両面を携えて、驀進する宗教国家の軌跡を一冊で通覧する。神学・宗教学の泰斗が記す、全く新しいアメリカ史。
目次
「アメリカ」の始まり
ニューイングランドの建設
ピューリタンの信仰と生活
大覚醒
独立革命期
諸教会の伸展と変容
アンテベラム時代
新しい信仰の諸形態
南北戦争期
アメリカの膨張
二つの世界大戦
戦後から現代へ
著者等紹介
森本あんり[モリモトアンリ]
1956年神奈川県生まれ。国際基督教大学、東京神学大学大学院、プリンストン神学大学院を修了(Ph.D.)。国際基督教大学人文科学デパートメント教授(哲学・宗教学・アメリカ研究)、2012年より学務副学長。プリンストン神学大学院とバークレー連合神学大学院で客員教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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buchipanda3
112
アメリカの小説やニュースではキリスト教に関する話や引用がよく出てくる。その背景に詳しくないので何となく読み流していたが、もう少し知りたくなりこちらを手に取った。本書ではアメリカのキリスト教の変遷を軸にアメリカ史が語られる。独立前の時代も分量があり興味深く読めた。国の出自から伝統的に権威への疑念が強く、ピューリタニズムの知性偏重に対して反知性主義が出たり、差別など時代の問題に応じて宗派も分裂統合する。起源の違う移民がまとまるには宗教的な理念の位置づけが大きく、現代も同様。あと伝道者って影響力があるのだなと。2020/10/20
ネギっ子gen
62
【日本に「アメリカ研究」の書物は多いが、「アメリカのキリスト教」という主題は敬遠されたまま】 米国を一貫して突き動かしてきた理念は、キリスト教そのもの。自由・寛容・狂信・正義……相反する価値観が渦巻く中を驀進する宗教国家の軌跡を通覧したアメリカ史。「はじめて」で、<「植民地時代」はピューリタンの時代であるが、この時代の研究者が極端に少ないのも日本のアメリカ研究が克服すべき問題点の一つ/アメリカがアメリカと「なっていく」過程を知ることなくして、今日のアメリカをその底流において理解することは困難である>と。⇒2024/03/31
おさむ
44
アメリカの歴史はキリスト教と切っては切り離せない。なかなかなかった一般向けのこの通読史はありがたい。先進国で唯一プロテスタント優勢の国で、ハーバード大学などのアイビーリーグはいずれも神学を学ぶ為に設立された。3度にわたる信仰復興(リバイバル)や各宗派の勢力争いは興味深い。時に教会は十字軍的な精神で道徳と宗教を守ろうとすることがある。禁酒法や性の禁忌、進化論への抵抗の流れがあり、福音派に繋がった。ビリーグラハムが始めた楽観的で単純なTV大衆伝道が、トランプ大統領を生んだとの指摘など得るものが多い良書でした。2021/02/09
piro
35
新大陸の植民から合衆国独立、その後の国家の発展をキリスト教という観点でたどった一冊。北米で主流となったキリスト教徒は熱心な信徒ではなく理神論的、よく言えば時代の流れを捉えて柔軟に変化してきた印象を受けました。直接的に宗教が政治を主導してきた訳ではないものの、バックグラウンドとして大いに影響を与えている事が伺えます。興味深い内容ではありましたが、キリスト教と政治の関連にもう少し深入りした内容であれば、もっと面白かったのではないかと思います。あとはユダヤ教との関連も。私の前提知識が不足していたのが最も残念…。2021/06/14
さきん
33
アメリカにおける宗教を俯瞰する文庫本として良く作られている。カトリックからピューリタン、イギリス国教、プロテスタント、福音派、公教会、パブテスト、メソジストと到来してきては分派を繰り返し、モルモン教、エホバまで至りもはや原型をとどめていない。その要因には、様々な文化背景をもった移民やセクトという大衆への演説、布教活動があると著者は見ている。トランプやアメリカの反知性主義、中央部の白人大衆層を理解するに必要な内容。2021/05/23
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