出版社内容情報
安部龍太郎渾身の三部作始動。関白・近衛前嗣と若き武将・織田信長の邂逅!正親町天皇を弼け、将軍義輝と連携して秩序回復に当たる前嗣の前に立ちふさがる、実力者・松永久秀の狙いとは何か。そして、古来より神々との対話をつとめとしてきた朝家の、恐るべき秘密とは。対決の時が近づく!
安部 龍太郎[アベ リュウタロウ]
著・文・その他
角川書店装丁室[カドカワショテンソウテイシツ]
著・文・その他
内容説明
将軍・足利義輝の挙兵は、三好長慶との和議という妥協に終わり、永禄元年(一五五八)、義輝は帰洛を果たした。なおも長慶を除こうとする関白・近衛前嗣は、正親町天皇即位の礼を機に、勅命をもって諸大名に上洛を促すという奇策に出、若き織田信長を知る。前嗣の計画に、再び反撃に出た松永久秀を操るものの正体は何か?そして太古より神々に仕え、天に対して礼を尽くしてきた朝家が犯した、恐るべき秘密とは?「黄泉の国なくば、朝家の神聖も保たれぬと知れ」―死霊の恫喝に即位の礼の行方は?“戦国三部作”始動。
著者等紹介
安部龍太郎[アベリュウタロウ]
1955年福岡県生まれ。国立久留米高専卒業後、作家を志して上京。図書館勤務等の傍ら作品を発表し、小説家に。89年から一年間、「週刊新潮」に連載した「日本史血の年表」(90年、『血の日本史』と改題し刊行)で衝撃的なデビューを飾る。主な作品に、直木賞候補となった『彷徨える帝』などがある
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感想・レビュー
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TheWho
13
下巻に入り足利義輝と三好長慶・松永弾正の戦いは、ますます激しさを増すが、近衛前嗣の謀略により勅命で和議とし、義輝は5年振りに上洛を果たす。そして正親町帝の即位の礼を契機に前嗣は上杉謙信や織田信長、斎藤義龍等の戦国大名を上洛させ三好氏攻略を画策するが、そこに松永弾正と、その裏にいる内親王祥子に取り付く怨霊の正体が、物語を佳境に導く。ともかく本作品の中核は、歴史変遷の中で日本の国体が維持できた根本を描写したかと思える興味深い作品でした。2022/10/25
北之庄
8
下巻を読み終わりました。後奈良帝崩御から正親町帝即位までの皇室、朝廷内の確執を三好長慶や松永弾正等戦国大名の台頭を交えて描く。初めて知るこの辺りの事情や政治的闘争は、純粋に興味深く読み進めた。ただ黄泉の国や思念、悪霊等、著者にしては珍しくそこかしこに伝奇的手法を取り入れた作風は、個人的にはいただけなかった。2019/01/19
明智紫苑
8
ファンタジー色の強い小説だけど、私には合わなかった。湾岸戦争などのせいで一神教不信になった私は、オウム真理教事件などのせいで多神教優位論に対しても疑問を抱くようになったが、結局どの宗教も一長一短なのね。宗教が重大な要素の小説なら、『秘本三国志』やバーナード・コーンウェルのアーサー王三部作がオススメ。2015/12/21
kazukitti
7
近衛前嗣への史実の知識がほぼないので、もう自分の公家衆への偏見~他人のふんどしで相撲を取る権力の寄生虫~ありきだったので、まぁこう話の時代歴史ものじゃなくて伝奇ィ!?感も含めて、終始主人公への共感がないままだったw 後半見知った戦国武将がチラホラ見えてくるあたりはクライマックス感はあったけど、知識として公家が文化の継承発展のキーマンてのは知ってても、作品中で別段そんなに触れてるワケでもなく、関白の矜持とか帝の神から委託された王権とかうすら寒い自己正当化に、うへぇ感が増すばかり。2021/12/27
ゆうこ
7
帝が即位されるということがどれほど大変なことなのか。人・金・政治・思い・恨み…すべてがそうではないとしても、この時代であればすべてが真実に思える。近衛前久がこれから向かう戦国時代のうごめきが、すでに始まっている。金がすべてでも、政治がすべてでもない世の中。戦国時代とはそういったものだったと思う。帝・天皇というのは国ができたときから決まっていることは知っていたが、朝廷の役職までが決まっているとは知りませんでした。2015/11/30