内容説明
十四歳の銀次は木綿問屋の「大黒屋」に奉公にあがることになる。やがて店の跡取り藤一郎に縁談が起こり、話は順調にまとまりそうになるのだが、なんと女中のおはるのお腹に藤一郎との子供がいることが判明する。おはるは、二度と藤一郎に近づかないようにと店を出されることに…。しばらくして、銀次は藤一郎からおはるのところへ遣いを頼まれるのだが、おはるがいるはずの家で銀次が見たものは…。(「居眠り心中」)月夜の晩の本当に恐い江戸ふしぎ噺・九編。
著者等紹介
宮部みゆき[ミヤベミユキ]
1960年、東京生まれ。87年「我らが隣人の犯罪」でオール読物推理小説新人賞を受賞。89年『魔術はささやく』で日本推理サスペンス大賞を受賞。92年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、『本所深川ふしぎ草紙』で吉川英治文学新人賞を受賞。93年『火車』で山本周五郎賞、97年『蒲生邸事件』で日本SF大賞を、99年には『理由』で直木賞を受賞した
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaizen@名古屋de朝活読書会
268
江戸の「あやし」い話が沢山。恐い話、なるほどと思う話など9話。居眠り心中、影牢、布団部屋、梅の雨降る、安達家の鬼、女の首、時雨鬼、灰神楽、蜆塚。解説の東雅夫が、丁寧に背景を描いている。解説の引用・参考文献を読んだら、また読むと面白いかも。http://bit.ly/12TDEQH2013/05/22
扉のこちら側
248
宮部みゆきの江戸怪談話といえば鉄板であり安心して手に取れる。どちらかと言えばぞっとするような怪談ではなく人情話を期待してしまうのだけれど。その点では、表題作の『あやし』と『安達家の鬼』が良かった。怖いほうの話であれば『梅の雨降る』が因果応報話であり、しかし気の毒さもあり切なかった。2018/06/29
takaC
227
江戸時代ならこんなことがあってもあまり不思議ではないのかもしれない。2018/05/14
yoshida
152
江戸の町の怪異を描いた短編集。ぞっとする作品から、安らかな読後感の作品等を幅広に集録。人の心の恐ろしさを感じる「影牢」、「梅の雨降る」、「時雨鬼」。商家の暗い因習が語られる「布団部屋」。暖かさのある「安達家の鬼」。「布団部屋」が最も恐い。宮部みゆきさんの作品で共通する、人の持つ悪感情の丹念な描写も健在です。「三島屋」シリーズや、「あかんべえ」等の怪異モノへの萌芽を感じる内容。真夏の暑い夜に恐怖による涼を与えてくれます。現代を舞台にした怪異譚もあれば、読んでみたいと思ったりもする。実に粒揃いの作品集でした。2020/08/22
とん大西
134
…これです、丁度いい怖さ。ほのかに愛嬌のある不気味さといえば言いでしょうか。宮部さんの哀愁漂う怪談に今回も魅了されました。いやぁ、それにしてもハズレがない。大胆な見せ場があるわけじゃあない。が、静かに淡々とした語りはそれだけでダークサイドの淵を眺めているような心持ちになってしまう。男も女も江戸っ子たちの丁々発止もやはり絶品。お気に入りは寂寥とした「安達家の鬼」や人情味あふれる「女の首」。人生の機微…読ませます。2020/08/10