出版社内容情報
ラフカディオ・ハーン[ラフカディオハーン]
著・文・その他
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
85
体中に経文を書かれた芳一が耳をもぎ取られるという残酷な話が、なぜこんなに心を打つのか。それは西海に沈んでいった平家一門の哀しみに、芳一が命を張って触れていくからだ。彼は琵琶の名手であり、死者の魂に深く感応し得たのも芸術の才ゆえだろう。亡霊が呼びに来た時、甲冑の音を不吉とせず幸運の訪れと見た芳一の直感は芸術的な閃きを物語っている。盲目の彼はただ一筋の天稟に導かれ、試練を耐え抜いて芸術家として生きる道を見出していくのである。芳一の直感は闇の中に訪れた曙光。これは内なる声を信じた者の成長を描く物語なのだと思う。2014/08/10
ワッピー
53
【日本の夏は、やっぱり怪談】再読ですが、新鮮でした。大名の奥方の理不尽な嫉妬を描いた妖艶な「因果ばなし」、スプラッタな「幽霊滝の伝説」、あえて未完の「茶碗の中」、サイコパスな息子「雉子のはなし」が印象的でした。嫉妬の恐ろしさ、因果応報、命を賭して盟約を守る信義の大事さは繰り返し現れてきて、ハーンに響いたテーマだったのだのでしょう。地味な話もありますが、こういう話が西洋ではどのように受け止められたのか気になります。ひ孫にあたる小泉凡さんが書いたハーンのルーツを追う「怪談四代記 八雲のいたずら」もおススメ! 2021/07/08
キジネコ
46
蒲松齢さんの中国の清代の怪奇譚『聊齋志異』は、忘れることを許さぬ不思議な乾きで再読の沼に誘い込みますが、此の本からも同じ様な呼び声が聞こえます。心の闇、人の織り成す世界の色、交錯する意志、そこに妖し気な焔が立つのを見ます。正邪、善悪で私たちの世界を分けることに、初めから意味などなかったのですね。美しく、恐ろしく、切なく、滑稽な42篇の怪奇譚、ラフカデイオ・ハーンというフィルターを透過したフォークロア。表紙の雪女に魅入られて 又々読痴朴念仁は 幽玄の境界に遊びました。特は「安芸之助の夢」「果心居士のはなし」2015/07/02
nyanco
42
日本女性こそ日本の美であると日本と日本女性をこよなく愛した八雲。死んだ後も愛しい人への思いを断ち切れず亡霊となって現れるお露や、決して再婚しないと今際の際にした約束を違えた夫ではなく新妻をとり殺す先妻の怨念。従順で優しく穏やかに見える日本女性の怨、それさえも愛する人への深い思慕のなせる技と八雲には思えたのだろうか。狂おしいまでにひたむきな思いの女に反し、男達はいつも逃げ腰で簡単に約束を違え、愛した人を切り捨てる。ほんにいつの世も、殿方とは仕方のない生き物にございます。2009/09/02
拓也 ◆mOrYeBoQbw
35
古典短篇集。日本の古典を題材に、海外にも日本の古典を紹介する意味合いで書かれた幻想短篇集を再び日本語に訳したものですね。夏と言えばまずこれ!という定番ですw。『耳なし芳一』から始まって、のっぺらぼうのスタンダードになった『むじな』、日本版ドライアード譚『青柳のはなし』と、日本の古典をベースにしつつ、耽美、滑稽、妖艶、奇妙な味、と八雲が物語としての完成度を高めたのが見事ですねー。純粋に楽しんで読める古典作品だと思います(・ω・)ノシ2016/08/08