出版社内容情報
八紘一宇のスローガンのもとで、日本人は何をしたのか。敗戦後、引き揚げる日本兵は「ハポン、パタイ!(日本人、死ね!)」とフィリピン人に石もて追われたという。戦下に刻まれた、もう一つの真実を学ぶ。
NHK取材班[エヌエイチケーシュザイハン]
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内容説明
レイテ決戦は、日米の雌雄を決した戦い、マッカーサーの執念の戦いと言われる。しかし、実は50万人の日本兵戦死者をうわまわる、100万人のフィリピン人の犠牲者があった。敗戦後、引き揚げる日本兵は、フィリピン人に「ハポン、パタイ」(日本人、死ねー)と石もて追われたという。大東亜共栄園、八紘一宇のスローガンのもとで、日本人は何をしたのか。わたしたちはその事をいま学び始める。
目次
1 争奪戦の幕開け
2 幻の「大東亜共栄圏」
3 マッカーサーの伏兵
4 知られざるレイテ決戦
5 二頭の巨象と蟻
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェルナーの日記
103
レイテ沖海戦は、実質的にフィリピンにおける陸軍の植民地支配の失敗が大敗した真因だと思う。〝八紘一宇”〝大東亜共栄圏”という高邁な思想を唱えても絵に描いた餅では話にならない。日本軍が占領する以前から米軍によって支配されていた当地は日本流のやり方では全く通用しなかった。日本人とはアイデンティティが異質であることを解らずに無理やり型にはめようとした。そして現地人の反感を買いゲリラ化してしまう(後に米軍もベトナム戦争で痛い目に遭う)。戦術的にいえば日本軍には海兵隊(陸・海軍の両要素取り込んだ軍隊がなかったことだ。2016/06/26
おたま
48
大岡昇平『レイテ戦記』を読んでいる途中だけれど、記述があまりに詳細であり、大局として何か起こっているのかが分からなくなるときがある。そこで、「レイテ戦」について俯瞰的に理解できるものはないかと探していたところ、他の方のレビューの中にこの本が紹介してあり、読んでみることにした。この本では、「レイテ戦」というよりも、フィリピンでの戦いのもつ、日本にとって、アメリカにとって、そしてフィリピンにとっての意味が大きく押さえられており、全体の流れとしては掴むことができた。2023/09/12
nnpusnsn1945
35
林信吾さんの『「戦争」に強くなる本』で取り上げられていたので読んでみた。日本軍の解放が実際は建前に過ぎないことが嫌というほどわかる。ゲリラの活動が激化した故、日本軍がフィリピンで安定して統治できたのは国土の3割だったという。本間雅晴司令官は、フィリピンの統治を任されたときに、外れくじだと周囲に漏らしたらしい。『逆説の軍隊』で、大正時代に軍紀引き締めを訴えていたとわかったが、押し付けがましい支配の上に、規律の乱れた将兵が蛮行をはたらくのだから、フィリピンの人々が離反するのも無理はないと思ったのかもしれない。2020/12/25
CTC
10
第5巻は比島戦を通して、大東亜共栄圏と戦後の対東南アジア外交の姿を描く。マニラだけで無辜10万、全土で百万の死。万の単位での虐殺の事実…。これらは日米が戦場にしてしまった事に加え、日本の失政⇒ゲリラの猖獗、のゆえ。虐殺は例えば山下奉文の指揮下にない海軍陸戦隊の仕業だが、マッカーサーは山下を敵役に仕立て、降伏調印式にパーシバルを連れてきたり宣伝に活用した。 日比関係は昭和30年以降政府レベルで安定。戦後賠償に数倍するODA事業は、比の指導層も潤したろうが、事業は日本企業が請け負い、住民の恩恵は乏しかった。2016/07/08
樋口佳之
9
「八紘一宇」なんてわからないですよ。いいだす人間からわかっていませんよ。/具体的にどうするっていったってね。世界中の人間が一家になるということなんですからね。どのようにして一家にするの。一家になってどうするの。「八紘一宇」というのは、本当にわけのわからん言葉です。そんなことを占領地でいって通じるわけがない。第一、私がわからんのだから。2016/08/13