内容説明
俺は、関東テレビ総務部総務課制作庶務係の、宇賀神邦彦だ。タレントや局の連中が次から次へと撤きちらす面倒事を裏側から始末して回るのが仕事だ。以前は制作部でディレクターをやっていたのだが、4年間に9本の番組をコケさせたことの落とし前というわけだ。電話口で薄禿の田所制作部長が、バカヤローと怒鳴ると、まあ、俺の出番ということになる―。同僚もいないし、我が家へ戻っても猫の権太郎以外は待つ者もいない身の上だが、楽しみがないわけではないから同情は不要だ。トラブル・バスター。人は、そう、俺を呼ぶ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ワッピー
9
久々に宇賀神に再会。テレビ局という特殊な環境で、出生コースを外れた元ディレクター宇賀神邦彦がトラブルを解決する、一見ハードボイルド・スタイルをとるリーマン小説とも読めます。外れ者ながら自分の節を曲げない宇賀神は、アクの強い出演者、頑固な職人さん、理不尽な上司に囲まれて、実は幸せなのかもしれません。初読のころには、彼のこだわり・センスがまぶしかったけれど、いまや自分も当時の宇賀神の年齢を超えました。今なら問題になる表現もありますが、あのころの雰囲気は確かにそんな感じでした。ある意味、時代小説としておススメ!2016/07/11
夜狼寺 大
6
第1話が書かれたのが約30年前で、流石に設定や出てくる個人名に古臭さを感じる。80年代の空気感や風俗を知るには良いかもしれないが、興味のない読者には異世界のように見えるかもしれないと言うと、言い過ぎかな?それでも僕は十分面白かった。全編に流れている安易なテレビ番組の制作姿勢への景山さんの怒りは、僕も共感できるところが有ったし、一人称の「俺」が「僕」になっているミスは、涙が出るほど景山さんを愛おしく思った。このまま時代の波に飲み込まれて消えるには惜しい作品だと思います。2016/06/24
やいとや
3
景山民夫も生きてれば改宗して(しなくてもよいけど)また面白い小説書いたかもしれないのになあ。2021/03/11
冬佳彰
3
これを連載していた雑誌(たぶん雑誌だったと記憶している)で目にして、なんだかB級でかつ洒落た雰囲気が好きでハードカバーも買って読んだなあ。テレビ局の持て余し者が、探偵紛いの、時にはアクションもあり、泣かせもありながら局のトラブルを解決するという連作モノだ。シリーズの最後のほうになると、その時期、著者がハマっていたらしい宗教関係の話題が突飛に出てきて、若干の違和感をおぼえたこともあったな。まあ、人生、色々ある。好い加減な上司との掛け合いが楽しい小説だった。
K T
1
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