内容説明
悪霊は魂の中に棲む―呪われてしまった権力者はいかなる生き方をするのか?古代貴族社会の熾烈な権力闘争を勝ち抜くことができず、恨みを呑んで死んでいく者。それらの者が死後、“祟り”を及ぼす悪霊になるといわれる。崇道天皇、伴大納言、菅原道真、平将門、楠木正成…。悪霊に苦悩する者、悪霊を利用する者。平安の公家社会に横行した悪霊の系譜をたどりながら日本人の裏精神史に迫る、連作歴史人物評伝の大傑作。
目次
吉備聖霊―忘れられた系譜
不破内親王姉妹―呪われた皇女たち
崇道天皇―怨念の神々
伴大納言―権謀の挫折
菅原道真―執念の百年
左大臣顕光―不運と報復
平将門―叛逆児の亡魂
崇徳上皇―王者の地獄
頼朝の死を廻って―その虚実の世界
楠木正成―忠臣の実像
将軍家斉の周辺―このいかがわしき構図
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ポチ
62
悪霊は、死者に対し後ろめたさを持っている人を貶めたり利用したりするために、生み出される事も多いとは、なるほどなぁ〜と感心しました。祟られる人にはそれなりの理由があるという事ですね。2017/02/27
ちゃいろ子
48
「菅原道真をはじめ、祟道天皇、伴大納言など、古代の貴族社会において、不運にも権力争いに敗れ去っていった者たち。彼らの生きた時代背景とともに、怨念の系譜をたどり、日本人の精神構造を浮かび上がらせる人物評伝」 永井路子さんはやはり面白いですね。 古代の貴族や天皇の関係性などは、ややこしくて??となったが、読んでいる時は自分がとても物知りになった気がして楽しい(笑) 悪霊はそれを恐れる人の魂の中に棲む。 誰かを恐れさせ怯えさせる事で得をする人間がいるから、、、生きている人間が一番恐ろしいということ。 2022/06/05
みなみ
8
「応天の門」を再読している折、菅原道真と伴大納言が出てくるので読んでみた。「悪霊列伝」の名はあるが、古代の王朝から平安時代までの権力闘争の歴史を順番になぞっている一冊だ。著者も述べているのだが、死後「祟り」として人々に甚大な被害を与えた道真や早良親王は、生前はまったくそんな人ではなく、祟りからはかけ離れているような人格だ。だから筆者は、祟りとは、敵対者を非業の死に追いやった側の罪悪感が生み出すものだと述べており、読んでいてなるほどと思う。2022/12/03
Akihiro Nishio
6
歴史の中で権力争いに敗れた者が、後に悪霊として勝者に復讐する話しを集めた列伝である。タイトルと違っておどろおどろしい話しではなく、なぜ悪霊が必要とされるかが明瞭に分析される。貴族社会と武家社会の対比も興味深い。特に権力構造が未だ不安定でめまぐるしく勝者と敗者が入れ替わる奈良朝時代の話が面白かった。歴史を理解するのにも役立つ。非常に良い本だった。あえて難点を言えば文章がややくどいこと。文章を1割削ればもっと読まれる本となっただろう。2015/07/25
こりすまま
5
この本の新潮文庫版(正)(続)は、以前知人に貸したら返って来なかった(T-T) だから、角川で復刊したときは本当に嬉しかった。 昨年の大河ドラマ観てるときは「流星」と 「乱紋」を読み直したけど、今年は「崇徳上皇」の出ているこの本。 新潮文庫版を読んでいた中学時代から、何度読み返したかわからないほど大好きな、ある意味わたくしの歴史観を決定させたかもしれない本です。2012/09/28