感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
SOHSA
32
10年という時間がこんな風に人を美しく格好良くさせるのならば、人生もなかなか捨てたものではない。風景と登場人物が上手く溶け合って、片岡義男の小説は独特の世界が広がる。世の中が今よりも少しだけ洒落ていた頃、空と海とオートバイと風が一篇の物語となった時代。2014/08/12
SOHSA
27
《購入本》毎年、梅雨明けから夏の終わりの季節になると無性に片岡義男の小説が読みたくなる。巻末の解説に述べられているように、片岡義男の小説はまさに風景の小説だ。読み手の眼前には鮮やかに風景が立ち昇り、その空気感に浸ることができる。からりと爽やかな風景と人物たちと。なぜか通り過ぎた来し方が懐かしく思い出される。確かにそんな季節があり、それから何度も'10年後'を繰り返してきたことを。2022/07/10
りんご
5
解説の映画監督の竹島将さんが片岡義男さんの小説を”風景の小説”と読んでおられます。片岡作品は登場人物のどろどろとした感情は描かれていません。この作品の登場人物もそうです。トライアングルな関係です。 この竹島さん若くしてオートバイの事故で亡くなられたそうです。残念です。2022/07/06
生活相談屋
5
片岡義男。いやぁ、何年ぶりだろう、片岡義男の小説を読むのは。30年ぶりくらいかな。姉が当時ハマってて、家に沢山あった文庫本を何気なく読み始めたのが最初だったような。当時はあまり深く考えずに「オシャレな人ばっかり出てくるなあ」なんて思ったりしてたが。この『ten years after』は初読である。実にpopでcoolでdryな、情念とは無縁の乾いた世界に久しぶりに触れて、なんだかとても心地よかったのだ。これはこれで、ワン&オンリーな片岡義男の世界である。結構馬鹿にされてたが、とても良い小説家だと思う。2017/04/25