感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
白義
15
太陽系から遠く離れた、人類など知らぬはずの惑星の湖面の底に沈む、十数キロ以上もある巨大な「顔」という表題作の超弩級のあらすじに惹かれ購入してみた本だが、果たして実際に読むとそのインパクトのある出だしを上回る巨視的かつ、詩情に溢れた、宇宙と精神を巡る一大ロマン。精神というものが自然に刻むパターン、その先に存在する宇宙の深奥。ゴルディアスの結び目などから虚無回廊までをつなぐ作品群と捉えるのが妥当なところなのだろうか。動物植物、生死も機械と生命も全ての区別が消え去った超精神的な生態系の壮大な色彩性が見事に美しい2018/09/27
記憶喪失した男
11
小松左京の短編集。電子書籍で読んだ。「歩み去る」は何かを探して旅をしているカップルの話。「劇場」は劇場を見てばかりいる人たちの話。「雨と、風と、夕映えの彼方へ」はよくわからなかった。「氷の下の暗い顔」は面白かった。全体として面白く、水準も高いのだが、独創性という点ではちょっと劣ると思った。 2016/10/08
深海魚
6
SFの原初的な神秘と興奮が小松左京には(というかこの時代のSFには)あり、そこには滅び去るものへの哀切も含まれている。こういうSFはもう書かれないのだろうか。表題作もいいけど、他の三編もそれぞれ素晴らしかった。2017/01/09
tama
2
自前本 昭和55年7月購入初版角川ハードカバーです。栃木県小山市から磐田に移る直前頃ですな。この本は寂寥感満タン。ちょっとだけ希望らしきところを出すんだけど、それもパンドラの箱っぽくて心から希望を持てないという悲しみまである。小松の旦那に合掌。2013/03/28
kuro_kuroyon
2
入手困難になってしまいましたが「小松左京」先生の傑作の一つだと思っています。この作品を読んだ後、自分の文明観が激しく揺さぶられました。カテゴリーではSFですが、ファンタジーのFです。最近増えている「えせエコロジスト」が裸足で逃げ出すほど、深い洞察。自然、生命、そして宇宙に対する深い愛情を感じられる一冊です。